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外壁塗装 シーラー・フィラー・サフェーサー・防錆プライマーを徹底解説

外壁下塗り塗料の歴史と発展|シーラー・フィラー・サフェーサー・防錆プライマーの進化

外壁塗装のお見積書を見ると、「下塗り」「シーラー」「フィラー」「サフェーサー」「防錆プライマー」といった、少し聞き慣れない名前が並んでいることがあります。

上塗り塗料でしたら、「シリコン」「フッ素」「無機塗料」など、なんとなく性能を想像しやすいものです。 ところが、最初に塗られて後から見えなくなる下塗り塗料は、どうしても関心が向きにくい存在です。

しかし、外壁塗装の品質を住まいに例えるなら、上塗りは美しい外観を整える洋服であり、下塗りは建物を足元から支える基礎や肌着のようなものです。

いくら高耐候な上塗り塗料を選んでも、下地に合わない下塗り材を使ったり、必要な塗布量が不足したりすれば、本来の耐久性は期待できません。 反対に下地の状態を正確に診断し、適切な下塗り塗料を丁寧に施工すれば、上塗りの発色、艶、密着性、耐久性は大きく安定します。

現在では当たり前に使われているシーラーやフィラーも、最初から完成された材料だったわけではありません。明治期に洋式塗料が国産化され、鉄をさびから守る鉛系さび止めが生まれ、戦後には合成樹脂や水性エマルションが発達しました。
その後、コンクリート、モルタル、ALC、窯業系サイディング、金属外壁など、住宅の外壁材が多様化するなかで、下塗り塗料も少しずつ役割を細分化してきたのです。 日本の近代塗料工業は、1881年に光明社が設立され、洋式塗料の国産化に成功したことから本格的に始まったとされています。

このコラムでは、外壁下塗り塗料の歴史と発展をたどりながら、それぞれの役割、選び方、施工上の注意点まで、一般の方にも分かりやすく、塗装職人の視点で詳しくお話しします。

このコラムで分かること
  • ■ 外壁下塗り塗料が生まれた背景と歴史
  • ■ シーラー・フィラー・サフェーサーの違い
  • ■ 防錆プライマーが発展してきた流れ
  • ■ 外壁材ごとの下塗り塗料の選び方
  • ■ 下塗り選定を間違えた場合に起こる不具合
  • ■ これからの下塗り塗料に求められる性能

外壁塗装の下塗り・施工仕様について
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1. 外壁下塗り塗料とは何か

外壁下塗り塗料とは、モルタル、コンクリート、ALC、窯業系サイディング、金属などの下地へ、上塗り塗料より先に塗る材料の総称です。

英語では、最初に塗る層を広くプライマーと呼びます。ただし、日本の建築塗装では、下塗り材の働きや粘度、膜厚、対象素材によって、シーラー、フィラー、サフェーサー、防錆プライマーなどの呼び方を使い分けています。

下塗り塗料が担う主な役割

下塗り塗料の役割は、単に上塗りの前に一度塗ることではありません。

  • ■ 外壁材と上塗り塗料を密着させる
  • ■ 下地への塗料の吸い込みを均一にする
  • ■ 風化した表面へ浸透し、脆弱な部分を補強する
  • ■ 細かな凹凸や巣穴を整える
  • ■ 旧塗膜の色を隠し、上塗りの発色を安定させる
  • ■ 鉄部の腐食反応を抑える
  • ■ 下地のアルカリ成分や可塑剤などの影響を抑える

つまり、下塗り塗料は、外壁と仕上げ塗膜のあいだに入り、性質の異なる二つの材料をつなぐ通訳のような存在です。

外壁は、同じように見えても一軒ごとに状態が異なります。吸水の激しい壁、表面が粉状に風化した壁、硬く緻密な壁、古い塗膜が残っている壁、ひび割れが多い壁。
これらすべてへ同じ下塗り材を使用することは、洋服のサイズを確認せずに仕立てるようなものです。

下塗り塗料の選定は、上塗り塗料のグレード以上に現場診断の力量が表れる工程だと、小林塗装では考えています。

2. 近代塗料以前の下塗りと素地保護

下塗りという考え方は、近代的な合成樹脂塗料が生まれるよりも前から存在していました。

木材へ油や膠、漆などを染み込ませ、表面の吸い込みを抑えてから仕上げる方法は、現代のシーラーに近い考え方です。また、木材の導管や小さな凹凸を砥の粉などで埋める目止めは、現在のフィラーやサフェーサーに通じます。

金属についても、表面へ油性材料と顔料を塗り、雨水や酸素を遮断する方法が古くから用いられてきました。鉄の腐食は、水分や酸素などの腐食因子が金属表面へ到達することで進みます。
そのため、塗膜によって腐食因子の侵入を遅らせ、金属面との付着力を保つことが、防食塗装の基本となります。

昔の下塗りは現場でつくる材料でした

現在のように、缶を開けて規定量で希釈すれば使用できる下塗り塗料は、長い技術発展の結果です。

かつては、職人が油、顔料、樹脂分、溶剤などを現場で調整し、下地の吸い込みや気候に合わせながら塗っていました。職人の経験が仕上がりを大きく左右する一方、材料の品質や配合が一定になりにくく、乾燥時間や耐久性にもばらつきが生じやすい方法でした。

その後、工場で均一に分散・調合された塗料が供給されるようになると、下塗り塗料は「職人が現場でつくるもの」から「塗料メーカーが性能を設計するもの」へ変わっていきます。

この変化が、近代的なシーラー、フィラー、サフェーサー、防錆プライマーの出発点になりました。

3. 明治時代に始まった日本の近代塗料工業

日本で洋式塗料が本格的に広がり始めたのは、幕末から明治時代にかけてです。

日本塗料工業会の資料では、日本人が初めて洋式塗料を使用した時期として、1853年のペリー来航後、条約交渉に使われた建物へ塗られた事例が紹介されています。当時の洋式塗料は輸入品で、非常に高価な材料でした。

その後、茂木春太・重次郎兄弟が高純度の亜鉛華製造や洋式塗料の開発に取り組み、1881年に東京で光明社を設立しました。これが日本の近代塗料工業の始まりとされています。

塗料の国産化が下塗り技術を育てた

洋式塗料の国産化が進むと、船舶、鉄道、工場、橋梁、建築物など、鉄や木を長期間保護する技術が求められるようになりました。

ここで重要になったのが、仕上げ色を塗る前に、素材と密着して腐食や吸い込みを抑える下塗り層です。

塗装が単なる着色ではなく、素材を保護し、寿命を延ばす技術へ変わるにつれて、下塗り塗料の役割も大きくなりました。

時代 下塗り技術に関する主な変化
幕末・明治初期 輸入された洋式塗料が船舶や洋風建築などへ使われ始める
1881年 光明社が設立され、日本の近代塗料工業が本格的に始まる
大正~昭和初期 鉄鋼構造物の増加に伴い、さび止め下塗りの研究が進む
戦後 合成樹脂、エマルション、エポキシ樹脂などが急速に発達する
高度経済成長期 コンクリートやモルタル建築の増加によりシーラー、フィラーが普及する
住宅改修時代 旧塗膜への付着性、ひび割れ追従性、多用途性が重視される

現在の外壁下塗り塗料は、明治期から続く素材保護の考え方に、合成樹脂化学、顔料技術、表面処理技術、環境対応技術が積み重なって生まれたものです。

4. 防錆プライマーの誕生と発展

外壁下塗り塗料の歴史を語るうえで、最も早く高度な発展を遂げた分野の一つが、防錆プライマーです。

鉄は強く、加工しやすく、建築や橋梁に欠かせない材料ですが、水分と酸素の影響を受けると腐食します。さびが進行すると体積が膨張し、塗膜を内側から押し上げ、膨れや剥がれを引き起こします。

1920年代 日本独自のさび止め塗料が発展

日本の防食塗料史では、1920年に島津源蔵が「易反応性鉛粉製造法」の特許を出願し、1928年には根岸信が、その鉛粉を用いた亜酸化鉛粉さび止め塗料を開発したことが大きな節目とされています。

亜酸化鉛や鉛丹などの鉛系顔料は、油性樹脂と反応して金属石けんを形成し、鉄表面を腐食しにくい状態へ保つ働きを利用していました。

その後、鉛系、クロメート系、シアナミド鉛系など、さまざまな防錆顔料が開発され、JIS規格にも取り入れられていきます。

1930~1950年代 クロメート系と合成樹脂の時代

1930年代以降は、ジンククロメートをはじめとするクロメート系防錆顔料が広がりました。

クロメート系顔料には、鉄や亜鉛、アルミニウムなどの金属表面を不動態化し、腐食反応を抑える働きがあります。淡い色の防錆塗料をつくりやすく、上塗り色への影響が少ないことから、幅広い工業分野で用いられました。

1950年代になると、油性塗料だけでなく、長油性フタル酸樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂が発達します。

塗装仕様も、さび止めを一度塗って終わる方法から、下塗り・中塗り・上塗りを組み合わせ、各層へ役割を分担させる塗装システムへ進化しました。防食分野の資料では、1955年前後に油性さび止め下塗りと長油性フタル酸樹脂中塗り・上塗りを組み合わせる体系が発展したことが示されています。

ジンクリッチプライマーとエポキシ樹脂

防錆プライマーの歴史を大きく変えたのが、亜鉛末を高濃度に配合したジンクリッチペイントです。

ジンクリッチペイントは、単に水や酸素を遮断するだけではありません。鉄より先に亜鉛が反応する犠牲防食作用によって、鋼材を積極的に守ります。

ジンクリッチペイントは1937年にオーストラリアで塗料化され、日本でも1943年に金属亜鉛末塗料の特許が登録されました。その後、1970~1980年代の橋梁や大型鋼構造物で、ジンクリッチプライマー、エポキシ樹脂下塗り、ポリウレタンまたはフッ素樹脂上塗りを組み合わせる重防食仕様が発達しました。

住宅で使われる防錆プライマー

一般住宅では、橋梁用ほどの重防食仕様を採用する機会は多くありません。しかし、鉄骨、庇、鉄製雨戸、シャッターボックス、折板屋根、金属サイディング、鉄製手すりなどには、適切な防錆プライマーが欠かせません。

現在では、エポキシ樹脂系、変性エポキシ樹脂系、弱溶剤系、水性系など、施工環境と素材に合わせた防錆プライマーがあります。

ただし、アルミ、ステンレス、亜鉛めっき、ガルバリウム鋼板は、一般的な鉄とは表面性状が異なります。「金属だから、すべて同じさび止めで良い」という考え方ではなく、素材に応じた非鉄金属用プライマーや付着性に優れたエポキシ系下塗りを選ぶ必要があります。

5. 戦後の合成樹脂塗料とシーラーの普及

戦後の住宅建築では、木材だけでなく、コンクリート、モルタル、石こうボード、スレートなどの無機質材料が急速に増えました。

これらの材料は、表面に細かな孔があり、水分や塗料を吸い込みます。吸い込みが均一でなければ、上塗り塗料の樹脂分が下地へ奪われ、色むら、艶むら、塗膜強度の低下が起こります。

そこで発達したのが、下地へ浸透して吸い込みを止めるシーラーです。

シーラーの語源と基本的な考え方

シーラーは、英語の「seal」、つまり封じる、密封するという言葉に由来します。

建築塗装では、下地の孔へ樹脂を浸透させ、吸水や吸い込みを整え、表面を固めながら上塗りとの密着性を高める材料を指します。

シーラーが必要とされた理由は、戦後の建築材料が、均質な金属面だけではなく、吸水性のあるセメント系下地へ広がったことにあります。

1950~1960年代 合成樹脂エマルションの発達

1950年代以降、酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂などを水中へ微粒子状に分散した合成樹脂エマルション塗料が発展しました。

水性エマルションは、火災や臭気のリスクを抑えやすく、モルタルやコンクリートなどの建築下地へ施工しやすいことから、建築塗装の普及に大きく貢献しました。

JIS K 5663では、合成樹脂エマルションペイントとともに合成樹脂エマルションシーラーが規定され、建築工事の標準的な材料として使われてきました。2000年代には、低VOC形のエマルションペイントやシーラーの開発も進みました。

透明シーラーと白色シーラー

シーラーには、大きく分けて透明タイプと白色タイプがあります。

種類 主な特徴 向いている場面
透明シーラー 下地へ樹脂を浸透させやすく、吸い込み防止や表面補強を重視する 風化したモルタル、吸水性の高い下地、脆弱な旧塗膜など
白色シーラー 下地色を整え、上塗り塗料の隠ぺい性や発色を助ける 濃色から淡色への塗り替え、補修跡が多い外壁など

ただし、透明だから必ず浸透性が高く、白色だから必ず表面だけに膜をつくるとは限りません。実際の性能は、樹脂の種類、固形分、粒子径、溶剤の種類、粘度などによって異なります。

色だけで判断せず、外壁材と旧塗膜の状態、上塗り塗料との組み合わせを確認することが大切です。

6. フィラーが必要とされた背景

シーラーは吸い込みを止め、表面を補強することには優れていますが、外壁にある凹凸や巣穴、細かなひび割れを厚く埋める材料ではありません。

高度経済成長期以降、モルタル外壁、コンクリート建築、ALCパネルなどが増えると、表面の不陸や微細なひび割れを整える材料が必要になりました。

そこで発達したのがフィラーです。

フィラーは埋めるための下地調整材

フィラーは、英語の「fill」、つまり埋めるという言葉から来ています。

シーラーよりも粘度が高く、一度の施工で比較的厚い膜を形成できるため、外壁表面の細かな凹凸、巣穴、砂状の肌、軽微なひび割れを整えます。

  • ■ モルタル外壁の細かなひび割れを覆う
  • ■ コンクリートの巣穴やピンホールを整える
  • ■ リシンやスタッコなどの粗い表面を調整する
  • ■ 補修部分と既存外壁の吸い込み差を抑える
  • ■ ローラーで新しい模様を形成する
セメント系フィラーから樹脂系フィラーへ

初期の下地調整では、セメント、細骨材、充填材などを配合したセメント系材料が中心でした。

セメント系フィラーは、コンクリートやモルタルとの親和性が高く、比較的大きな不陸を整えやすい一方、硬く仕上がりやすく、建物の動きに追従しにくい面があります。

その後、合成樹脂エマルションを配合した樹脂系フィラー、カチオン系フィラー、ポリマーセメント系下地調整材などが発達し、付着性、保水性、作業性、ひび割れ抵抗性が改善されました。

微弾性フィラーの登場

住宅の塗り替え市場が大きくなると、新築時の下地だけでなく、既存塗膜の上へ施工できる改修用下塗り材が求められるようになりました。

その流れのなかで普及したのが、微弾性フィラーです。

微弾性フィラーは、通常の硬質フィラーより柔軟性があり、旧塗膜に発生した微細なひび割れを覆いながら、ある程度の動きへ追従します。現在の製品には、シーラー、フィラー、中塗りの機能を一つへまとめたものもあり、下地調整と工期短縮を両立しています。

ただし、名前に「弾性」と付いていても、どのようなひび割れでも直せるわけではありません。

幅の大きなひび割れ、深い構造クラック、繰り返し動く目地付近の割れは、フィラーで表面を覆うだけでは再発します。原因を確認し、シーリング、樹脂注入、Uカット補修など、状態に合った補修を先に行う必要があります。

7. サフェーサーの発展と多機能化

サフェーサーは、英語の「surface」、つまり表面を整えるという考え方から生まれた材料です。

もともと自動車塗装、金属塗装、木工塗装などでは、下地と上塗りのあいだに入り、研磨しやすい膜を形成して、細かな傷や凹凸を平滑に整える材料として発展しました。

建築塗装では、研磨を前提としない製品も多く、旧塗膜やサイディング表面を整え、上塗りの隠ぺい性、光沢、均一性を向上させる下塗り材として使われています。

シーラーとサフェーサーの違い

シーラーは、下地へ浸透して吸い込みを抑える働きを重視します。

一方、サフェーサーは、下地表面に適度な膜を形成し、色や肌を整える働きを重視します。

比較項目 シーラー サフェーサー
主な目的 浸透、吸い込み防止、表面補強 表面調整、隠ぺい、仕上がり向上
粘度 比較的低い シーラーより高い傾向
形成する膜 薄膜になりやすい 適度な肉持ちがある
主な用途 モルタル、コンクリート、スレートなど 窯業系サイディング、旧塗膜、平滑仕上げなど
プライマーサフェーサーという考え方

近年は、プライマーの付着性とサフェーサーの表面調整性を一つにまとめたプライマーサフェーサー、通称プラサフも増えています。

建築用プラサフには、旧塗膜への付着、下地色の隠ぺい、微細なひび割れの充填、上塗りの光沢向上、防水性と透湿性の両立など、複数の機能が設計されています。

窯業系サイディングの塗り替えでは、補修跡、退色、旧塗膜の艶差などが表面へ現れやすいため、白色のサフェーサーで下地を整えることで、上塗りの仕上がりが安定する場合があります。

ただし、多機能材料であっても万能ではありません。吸い込みが激しいモルタルや風化した下地では、先に浸透性シーラーを塗り、その上へサフェーサーを重ねる仕様が必要になることもあります。

8. 住宅外壁材の多様化と下塗り塗料の進化

日本の住宅外壁は、時代とともに大きく変化してきました。

モルタル塗り壁が中心だった時代から、ALC、窯業系サイディング、金属サイディング、押出成形セメント板、無機系ボードなどが普及し、さらに塗り替え時には、新築時の塗膜や過去の改修塗膜が重なっています。

下塗り塗料は、外壁材だけでなく、表面に何が塗られているかまで考えて選ばなければならなくなりました。

窯業系サイディングへの対応

窯業系サイディングは、セメント質と繊維質を主原料とする外壁材です。

表面には工場塗装が施されており、塗り替え時には、無機質の基材ではなく、劣化した既存塗膜へ下塗りを行う場面が多くなります。

そのため、サイディング用下塗りには、旧塗膜への付着性、隠ぺい性、上塗り適性、補修部とのなじみが求められます。近年は、水性エポキシ樹脂系サーフェーサーなど、無機系基材と有機系旧塗膜の両方へ付着しやすい製品も普及しています。

ALC外壁への対応

ALCは軽量気泡コンクリートで、内部に多くの気泡を含みます。断熱性や耐火性に優れる一方、吸水管理が重要です。

ALCの塗り替えでは、目地のシーリング、防水性、透湿性、表面の巣穴処理を総合的に考える必要があります。

下地の凹凸が大きい場合は、シーラーだけでなく、下地調整用フィラーを先に施工する仕様もあります。塗料メーカーの仕様選定ガイドでも、ALCパネルへ下塗りを行う前に、必要に応じてフィラーで下地調整する方法が示されています。

旧弾性塗膜や厚膜仕上げへの対応

弾性スタッコ、単層弾性塗材、防水形複層塗材などの厚い旧塗膜は、内部へ水分が残ると膨れやすくなります。

そのため、単に強い密着力だけを求めるのではなく、水蒸気を外へ逃がす透湿性が重要になります。

現在では、旧塗膜の微細な割れやピンホールを補強しながら、高い水蒸気透過性によって膨れを抑えるサフェーサーも開発されています。

下塗り塗料の進化は、強く密着させる方向だけでなく、建物内部の水分を無理なく逃がす方向へも進んでいるのです。

9. 環境対応と鉛・クロムフリー化

昔の防錆塗料で使用されてきた鉛系、クロメート系顔料は、高い防錆性能を持つ一方、人体や環境への影響が問題となりました。

そこで、塗料業界では、鉛や六価クロムを使わずに防錆性能を確保する研究が進められました。

リン酸塩系防錆顔料への移行

現在の鉛・クロムフリー防錆塗料では、リン酸亜鉛、変性リン酸塩、亜リン酸塩などが広く使われています。

これらの防錆顔料は、金属表面をアルカリ性側へ保ち、不動態皮膜の形成を助けることで腐食を抑えます。鉛・クロムフリー防錆顔料の技術資料では、鉛系・クロム系の代替として、リン酸亜鉛系や亜リン酸亜鉛系が主流になっていることが示されています。

低VOC・水性化の流れ

建築塗料では、防錆顔料だけでなく、溶剤や添加剤の環境負荷も見直されてきました。

2000年代以降、ホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆、低VOC、水性化、弱溶剤化が進み、シーラー、フィラー、サフェーサー、防錆プライマーにも水性製品が増えています。

水性下塗り材は、臭気や引火性を抑えやすく、住宅地や集合住宅でも使いやすいことが利点です。一方で、低温、高湿度、結露、乾燥不足などの影響を受けるため、水性だから簡単というわけではありません。

また、環境対応は、単に特定の有害物質を使わないことだけではありません。原料調達、製造、輸送、塗装時の飛散、塗膜寿命、廃棄までを考え、長期間建物を守れる設計が重要です。
塗料の重金属対策に関する技術資料でも、製造から廃棄までを含めたリスクと耐久性を総合的に評価する必要性が指摘されています。

早く劣化して何度も塗り替える材料より、適切な施工で長く使える材料のほうが、結果として環境負荷を抑えられる。これは、これからの下塗り塗料を考えるうえで大切な視点です。

10. シーラー・フィラー・サフェーサー・防錆プライマーを比較

ここまでお話しした4種類の下塗り塗料を、分かりやすく比較します。

種類 主な役割 適した下地 注意点
シーラー 浸透、吸い込み防止、下地補強、密着性向上 モルタル、コンクリート、スレート、サイディングなど 大きな凹凸やひび割れを埋める材料ではない
フィラー 凹凸、巣穴、微細なひび割れの充填と下地調整 モルタル、コンクリート、ALC、粗い旧塗膜など 厚く塗りすぎると乾燥不良や割れにつながる
サフェーサー 表面調整、隠ぺい、仕上がりと上塗り適性の向上 窯業系サイディング、各種旧塗膜、平滑仕上げ 吸い込みが激しい場合は別途シーラーが必要
防錆プライマー 鉄部の腐食抑制、金属面への密着 鉄骨、鋼板、鉄製付帯部、金属外壁など 非鉄金属は素材に適した専用下塗りが必要
名前だけでは性能を判断できません

実際の製品には、シーラーとフィラーの機能を併せ持つもの、フィラーとサフェーサーを兼ねるもの、金属と窯業系下地の両方へ使える多用途プライマーなどがあります。

そのため、「シーラーだから薄い」「フィラーだから必ず弾性がある」「サフェーサーなら何にでも密着する」と名前だけで判断することはできません。

確認すべきなのは、製品名よりも、次の内容です。

  • ■ 適用できる下地と旧塗膜
  • ■ 使用できる上塗り塗料
  • ■ 標準塗布量と必要な膜厚
  • ■ 希釈率と施工方法
  • ■ 塗り重ね可能時間
  • ■ 下地含水率や気象条件
  • ■ 一液形か二液反応硬化形か

塗料缶に書かれた分類名よりも、メーカーが定めた仕様書を読み、現場条件へ当てはめることが重要です。

11. 外壁材別に見る下塗り塗料の選び方

下塗り塗料は、上塗り塗料のグレードだけで決めるものではありません。

まず外壁材を特定し、次に既存塗膜と劣化状態を調べ、その結果に基づいて選定します。

外壁材・部位 選ばれることが多い下塗り 確認したいポイント
モルタル外壁 浸透性シーラー、微弾性フィラー、カチオン系フィラー 吸水、チョーキング、ひび割れ、浮き、旧塗膜の種類
コンクリート エポキシ系シーラー、フィラー、サフェーサー 含水率、アルカリ性、巣穴、型枠離型剤、補修跡
ALC シーラー、下地調整フィラー、透湿形サフェーサー 目地、防水性、吸水、ひび割れ、パネル接合部
窯業系サイディング サイディング用シーラー、エポキシ系サフェーサー 旧塗膜、反り、含水、凍害、難付着サイディング
金属サイディング 変性エポキシ系、防錆プライマー、非鉄金属用プライマー 金属の種類、めっき、白さび、赤さび、旧塗膜
鉄製付帯部 エポキシ系または変性エポキシ系防錆プライマー ケレンの程度、さび、油分、塩分、溶接部
モルタル外壁の場合

モルタル外壁は、吸水性とひび割れの状態によって選定が変わります。

表面が健全で吸い込みを整えることが中心ならシーラー。細かなひび割れや凹凸が多い場合は微弾性フィラー。表面が脆弱で粉状になっている場合は、浸透性の高い下塗りで補強した後、必要に応じてフィラーを重ねます。

窯業系サイディングの場合

窯業系サイディングでは、表面が無機質に見えても、実際には工場塗膜や過去の塗り替え塗膜が残っています。

旧塗膜の種類、光触媒や無機系コーティングの有無、含水状態、表面の風化を確認し、付着試験や試験塗りを行います。

難付着サイディングへ一般的な水性シーラーを塗っただけでは、塗装直後はきれいでも、数年後に層間剥離する可能性があります。

金属外壁・鉄部の場合

金属部では、下塗り材より先にケレンと脱脂が重要です。

浮きさび、旧塗膜の剥がれ、粉化物、油分が残っていれば、高性能な防錆プライマーを塗っても十分に密着しません。

塗料は、汚れやさびの上から魔法の膜を張るものではありません。下地処理によって健全な面をつくり、その面へ適切な防錆プライマーを必要量塗ることで、初めて性能が生かされます。

12. 下塗り選定を間違えると起こる不具合

下塗り塗料は完成後に見えなくなるため、施工直後には不具合が分かりにくい工程です。

しかし、下塗りの選定や施工に問題があると、時間が経過してからさまざまな症状が現れます。

不具合 考えられる下塗り上の原因
塗膜の剥がれ 下地との相性不良、洗浄不足、脆弱層の除去不足、塗布量不足
膨れ 含水率が高い、透湿性不足、乾燥不足、旧塗膜内部の水分
艶むら 下地の吸い込み差、シーラー不足、補修部分の処理不足
色むら 下地色の不均一、隠ぺい不足、白色下塗りの不足
ひび割れ再発 フィラーだけで大きなひび割れを処理した、補修方法が不適切
さびの再発 ケレン不足、防錆塗料の塗布量不足、素材に合わない下塗り
縮れ・リフティング 強い溶剤が旧塗膜を侵した、塗り重ね間隔の不適合
高性能な下塗り材でも失敗する理由

カタログ性能が優れた下塗り材でも、施工条件が合わなければ性能は出ません。

たとえば、吸い込みの激しい下地へ規定以上に水やシンナーで薄めて塗れば、樹脂分が不足します。反対に、高粘度のフィラーを厚く付けすぎると、表面だけが先に乾き、内部に水分が残ることがあります。

二液形下塗りでは、主剤と硬化剤の配合比、攪拌、可使時間を守らなければ、十分に硬化しません。

下塗りは、たくさん塗れば良いわけでも、強い材料を使えば良いわけでもありません。

下地に合う材料を、定められた方法で、必要な量だけ均一に施工すること。地味ですが、これが最も確実な品質管理です。

13. 小林塗装が考える良い下塗り施工

小林塗装では、下塗り塗料を選ぶ前に、外壁の状態をできる限り細かく確認します。

最初に外壁材と旧塗膜を確認する

まず、外壁材がモルタル、ALC、窯業系サイディング、金属系などのどれに該当するかを確認します。

次に、表面へ塗られている旧塗膜を調べます。リシン、吹付タイル、スタッコ、単層弾性塗材、アクリル塗料、シリコン塗料、無機系塗料など、旧塗膜によって適する下塗り材は異なります。

吸水・付着・含水状態を見る

外壁へ水を当てたときの吸い込み方、触ったときの粉化、旧塗膜の浮き、ひび割れ、補修跡を確認します。

必要に応じて、テープによる付着確認、試験塗り、含水率測定、溶剤による旧塗膜の反応確認などを行います。

見た目が同じ白い外壁でも、表面が硬く締まっている壁と、指で触ると粉が付く壁では、選ぶ下塗り材が違います。

下塗り後の状態も確認する

下塗りは、塗って終わりではありません。

施工後に、吸い込みが止まっているか、塗り残しがないか、下地表面が補強されているか、フィラーの厚みが均一かを確認します。

下塗りをしても表面の吸い込みが激しい場合は、製品仕様を確認したうえで、追加塗装を検討します。

上塗り塗料より下地との相性を優先する

お客様が高耐候な無機塗料やフッ素塗料を希望されても、下地に問題があれば、そのまま塗ることはできません。

必要な補修と下塗りを行わず、高価な上塗りだけを選ぶことは、傷んだ土台の上へ豪華な家具を置くようなものです。

小林塗装では、上塗り塗料の商品名を提案する前に、どのように下地を整え、どの下塗り材でつなぐかを考えます。

見えなくなる工程だからこそ、説明を省かず、材料名と選定理由をお伝えする。それが、塗装店としての誠実さだと考えています。

14. 外壁下塗り塗料のこれから

これからの下塗り塗料には、単に密着力が強いだけではなく、環境負荷、施工性、建物の長寿命化を含めた総合性能が求められます。

水性でも高い付着性を発揮する技術

これまで、難しい下地や鉄部には溶剤系下塗りが有利と考えられる場面が多くありました。

しかし、樹脂粒子の微細化、反応硬化技術、エポキシ樹脂の水分散技術などが進み、水性でありながら旧塗膜や金属へ高い付着性を示す製品が増えています。

現在は住宅用スレート屋根などでも、無機系基材と有機系旧塗膜の両方へ付着し、厚膜による表面調整を行える水性下塗り材が実用化されています。

防水性と透湿性の両立

外から入る雨水は防ぎながら、壁内部の水蒸気は外へ逃がす。

言葉にすると簡単ですが、この二つを両立させるには、樹脂構造、膜厚、顔料配合、微細孔の設計が必要です。

高気密・高断熱住宅が増えるなか、外壁内部の水分をどのように管理するかは、今後さらに重要になります。

一材多機能化と省工程化

シーラー、フィラー、サフェーサーの機能を一つにまとめた多機能下塗り材は、工期短縮に役立ちます。

ただし、省工程化は、必要な工程を単純に減らすことではありません。

一つの材料で必要性能を満たせる下地に限り、メーカーが認めた仕様の範囲で採用することが基本です。劣化が激しい下地まで無理に一工程へまとめれば、本来必要な浸透補強や下地調整が不足します。

建物の状態に合わせる個別設計へ

将来は、外壁の含水率、表面強度、吸水性、付着性などの測定結果に基づき、下塗り材と塗布量をより細かく選ぶ施工が増えていくと考えられます。

材料が高機能になるほど、誰が塗っても同じ結果になるわけではありません。診断、材料選定、塗布量管理、乾燥管理が、これまで以上に重要になります。

下塗り塗料の未来は、万能材料を一つつくることではなく、多様な建物へ、より正確に合わせられる選択肢を増やすことにあるのではないでしょうか。

15. まとめ|外壁塗装の品質は見えなくなる下塗りに表れます

まとめ|外壁塗装の品質は見えなくなる下塗りに表れます イメージ

外壁下塗り塗料は、近代塗料の発展とともに、少しずつ役割を広げてきました。

明治期には洋式塗料が国産化され、大正から昭和初期には鉄を守る鉛系さび止め塗料が発達しました。

戦後には合成樹脂と水性エマルションの技術が進み、モルタルやコンクリートの吸い込みを整えるシーラーが普及します。

建築物の大型化と外壁仕上げの多様化に伴い、凹凸や微細なひび割れを整えるフィラー、表面を滑らかにして仕上がりを高めるサフェーサーが発展しました。

さらに現在では、鉛・クロムフリー、水性化、低VOC化、透湿性、多用途化、省工程化など、環境と施工品質の両方を考えた下塗り塗料が使われています。

  • ■ シーラーは、吸い込みを止め、下地を補強する材料
  • ■ フィラーは、凹凸や微細なひび割れを整える材料
  • ■ サフェーサーは、表面と下地色を整え、仕上がりを高める材料
  • ■ 防錆プライマーは、金属面の腐食を抑える材料

ただし、現在の製品は機能が複合化しており、名前だけで適否を判断することはできません。

大切なのは、外壁材、旧塗膜、劣化状態、含水率、吸い込み、ひび割れを確認し、その住まいに合う下塗り仕様を組み立てることです。

外壁塗装は、完成すると上塗りの色と艶だけが目に入ります。

けれど、十年後の状態を左右するのは、洗浄、補修、ケレン、乾燥、下塗りといった、完成後には見えなくなる工程です。

美しい仕上がりの奥に、丁寧な下ごしらえがある。
料理でも、ファッションでも、住まいの塗装でも、本当に良いものは、目立たない部分にこそ手間が掛かっています。

16. 外壁下塗り塗料のよくある質問

外壁下塗り塗料のよくある質問 イメージ

Q1. 外壁塗装の下塗りは本当に必要ですか?

必要です。下塗りには、外壁と上塗りを密着させ、塗料の吸い込みを整え、風化した表面を補強する役割があります。

下塗りを省略すると、施工直後はきれいに見えても、色むら、艶むら、剥がれ、早期劣化が起こりやすくなります。

Q2. シーラーとフィラーは、どちらが優れていますか?

優劣ではなく、役割が異なります。

シーラーは浸透と吸い込み防止、フィラーは凹凸や細かなひび割れの調整が得意です。下地状態によっては、シーラーを塗った後にフィラーを重ねることもあります。

Q3. サフェーサーはシーラーの代わりになりますか?

製品と下地によって異なります。

シーラー機能を備えたサフェーサーなら、一工程で施工できる場合があります。ただし、吸い込みが激しい下地や脆弱なモルタルでは、先に浸透性シーラーが必要になることがあります。

Q4. 微弾性フィラーでひび割れは直せますか?

髪の毛ほどの細かなヘアクラックを覆うことはできますが、大きなひび割れを根本的に補修する材料ではありません。

ひび割れ幅、深さ、動き、発生原因を確認し、必要に応じてシーリングや樹脂補修を行います。

Q5. 透明シーラーと白色シーラーはどちらがおすすめですか?

下地補強を重視する場合は透明タイプ、下地色を整えて上塗りの発色を高めたい場合は白色タイプが選ばれる傾向があります。

ただし、色ではなく製品性能と適用下地で判断することが大切です。

Q6. 下塗りを2回塗れば耐久性は上がりますか?

必要な下地で適切に追加すれば効果があります。

しかし、すべての外壁で下塗りを2回塗れば良いわけではありません。製品によっては厚塗りや塗り重ね過多が乾燥不良の原因になります。

Q7. 水性シーラーより溶剤系シーラーのほうが強いですか?

一概にはいえません。

現在の水性下塗り材にも、エポキシ樹脂や反応硬化技術を採用した高付着タイプがあります。旧塗膜を溶かしやすい下地では、むしろ水性のほうが安全な場合もあります。

Q8. さびの上から防錆プライマーを塗れば大丈夫ですか?

浮きさびや脆弱なさびを残したまま塗ることはおすすめできません。

ケレンによって不安定なさびと旧塗膜を除去し、粉じんや油分を清掃してから、防錆プライマーを塗ります。

Q9. 外壁が少し湿っていても下塗りできますか?

原則として、十分に乾燥させてから施工します。

湿潤面対応製品もありますが、雨水が残っている状態や、下地内部から継続的に水分が供給されている状態へ無理に塗るものではありません。湿っている原因を確認することが先です。

Q10. 見積書の下塗り欄では何を確認すれば良いですか?

最低でも、メーカー名、商品名、対象部位、塗装回数を確認してください。

できれば、なぜその下塗り材を選んだのか、外壁の吸い込みや旧塗膜をどのように判断したのかも質問してみてください。

きちんと現場を確認している塗装店であれば、上塗り塗料の説明だけでなく、下塗り材の選定理由も具体的に説明できるはずです。

外壁の状態に合う下塗り仕様をご提案します

外壁塗装は、同じ塗料をすべての住宅へ当てはめる工事ではありません。

小林塗装では、外壁材、既存塗膜、ひび割れ、吸水状態、補修歴などを確認し、必要な下地補修と下塗り塗料を検討します。

「見積書に書かれている下塗り材が自宅に合っているか分からない」「他社の提案と材料が違い、どちらが良いか迷っている」という場合も、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

小林塗装 店主 小林ゆず

塗装職人歴30年以上、施工実績2,000件以上。名古屋市を中心に、外壁塗装、屋根塗装、防水工事、シーリング工事、外壁補修などを行っています。

建物の材質や劣化状態を細かく確認し、塗料の商品名や価格だけではなく、下地調整、下塗り、塗布量、乾燥時間まで含めた高品質な塗装工事をご提案しています。

「塗って隠す工事」ではなく、住まいの状態と正直に向き合い、十年後にもご満足いただける仕事を目指しています。

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