塗装が剥がれる原因を深掘り|塗膜剥離の見分け方・補修方法・再発防止策
外壁や屋根をふと見上げたとき、塗装がペラペラとめくれていたり、雨戸の塗膜が手で触れただけで剥がれたりすると、「まだ塗装して数年なのに、どうして?」と不安になりますよね。
塗装は、住まいを雨や紫外線から守るための薄い保護膜です。
ところが、その塗膜が剥がれてしまうと、見た目が悪くなるだけでなく、外壁材や屋根材、鉄部、木部などの下地が直接雨水や紫外線にさらされます。
そのまま放置すると、鉄部ではサビ、木部では腐朽、モルタルではひび割れ、サイディングでは吸水や反りへ進むこともあります。
小さな剥がれが、住まいの傷みを広げる入口になる場合もあるのです。
ただし、塗装が剥がれる原因は一つではありません。
下地処理が足りなかった場合、塗料の組み合わせが合っていなかった場合、乾燥時間を守らなかった場合、内部から水分が押し出した場合、既存の外壁材そのものが崩れている場合など、剥がれ方によって原因は大きく異なります。
ここで注意したいのは、剥がれた部分の上から塗料を塗れば直るとは限らないことです。
原因を残したまま表面だけ塗り直すと、きれいになったように見えても、数か月から数年で再び同じ場所が剥がれる可能性があります。
塗膜の剥がれを正しく直すには、「なぜ剥がれたか」だけでなく、塗膜のどの層から剥がれているのかを確認することが重要です。
今回のコラムでは、塗装が剥がれる原因を施工、材料、下地、水分、環境、建物の動きという複数の角度から深掘りします。
さらに、剥がれ方による原因の見分け方、部位別の注意点、補修方法、費用の考え方、再発を防ぐための施工管理まで、名古屋の塗装店小林塗装が職人目線で詳しく解説します。
現在、外壁塗装の剥がれにお悩みの方はもちろん、「次の塗装で同じ失敗を繰り返したくない」という方にも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
- ■ 外壁塗装や屋根塗装が剥がれる主な原因
- ■ 塗膜の剥がれ方から原因を見分ける方法
- ■ 施工不良による剥がれと経年劣化の違い
- ■ 外壁・屋根・鉄部・木部で剥がれ方が違う理由
- ■ 剥がれを放置した場合に起こるリスク
- ■ 塗装が剥がれたときの正しい補修方法
- ■ 塗膜剥離を再発させない業者選びのポイント
1. 塗装が剥がれるとはどのような状態なのか
塗装の剥がれとは、塗膜が下地や下側の塗膜から離れ、本来あるべき場所に密着できなくなった状態です。
専門的には、塗膜剥離、付着不良などと呼ばれます。
剥がれ方には、次のような違いがあります。
- ■ 薄皮のようにペラペラとめくれる
- ■ 爪で引っかくと簡単に剥がれる
- ■ 水ぶくれのように膨らんだ後で破れる
- ■ 旧塗膜ごと板状に剥がれ落ちる
- ■ 粉や砂を伴いながら下地ごと崩れる
- ■ サビと一緒に塗膜が浮き上がる
一見すると、どれも同じ「塗装の剥がれ」に見えるかもしれません。
しかし、ペラペラと薄く剥がれる場合と、モルタル表面ごと崩れる場合では、原因も補修方法もまったく異なります。
色あせやチョーキングは、塗膜表面が紫外線や雨によって徐々に劣化する現象です。
手で触れたときに白い粉が付くチョーキングが起きていても、塗膜が下地にしっかり付着していれば、すぐに剥がれるとは限りません。
一方、塗膜剥離は、塗膜と下地、または塗膜同士の接着が失われている状態です。
色あせは塗膜表面の劣化、剥がれは塗膜の付着構造の破綻と考えると、違いが分かりやすいでしょう。
塗膜剥離は、住まいを守る保護層が欠けた状態です。
剥がれの範囲が小さくても、軽く見ないことが大切です。
2. 塗装が剥がれる原因は「どの層で離れたか」で考える
塗装が剥がれた原因を調べるとき、私たち塗装職人がまず確認するのは、どの層とどの層の間で剥がれたかです。
一般的な外壁塗装は、次のような層で構成されています。
- ■ 外壁材・屋根材・鉄・木などの下地
- ■ 既存の旧塗膜
- ■ シーラー・プライマー・フィラーなどの下塗り
- ■ 中塗り塗膜
- ■ 上塗り塗膜
たとえば、新しく塗った上塗りだけが剥がれている場合は、中塗りと上塗りの密着不良が疑われます。
新しい塗膜が下塗りごと剥がれて旧塗膜が見えている場合は、旧塗膜と下塗りの間に問題があるかもしれません。
旧塗膜までまとめて剥がれ、外壁材が露出している場合は、もともとの旧塗膜が弱っていた可能性があります。
さらに、剥がれた裏側にモルタルの粉やサイディングの表層が付いている場合は、塗料ではなく下地材そのものの表層剥離を疑います。
| 剥がれた位置 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 上塗りと中塗りの間 | 乾燥時間超過、汚れ、結露、異なる塗料の使用 |
| 中塗りと下塗りの間 | 下塗りの硬化不良、塗料の相性、塗り重ね不良 |
| 下塗りと旧塗膜の間 | 洗浄不足、チョーキング、旧塗膜との相性不良 |
| 旧塗膜と外壁材の間 | 既存塗膜の経年劣化、下地水分、旧施工の不良 |
| 外壁材の表層ごと | 凍害、吸水、風化、基材劣化、層間剥離 |
剥がれた表面だけを見るのではなく、剥離片の裏側を見ることが診断の第一歩です。
原因を見誤ると、弱った層を残したまま塗り重ねることになり、新しい塗装も道連れにして剥がれてしまいます。
3. 塗装が剥がれる原因1|高圧洗浄・ケレン・清掃不足
外壁塗装や屋根塗装で最も基本的な剥離原因の一つが、下地処理不足です。
塗装前の表面には、ホコリ、砂、排気ガス、藻、カビ、旧塗膜の粉、サビ、油分などが付着しています。
この状態で塗料を塗ると、塗料は外壁材ではなく、汚れの層に付着します。
たとえるなら、ホコリだらけの床に粘着テープを貼るようなものです。
最初は付いているように見えても、少し力が加われば、ホコリごと簡単に剥がれてしまいます。
高圧洗浄は重要ですが、何でも水圧だけで落とせるわけではありません。
鉄部のサビ、木部の傷んだ表層、密着した旧塗膜、油分、シリコーン系シーリング材の成分などは、ケレンや研磨、脱脂といった別の処理が必要です。
メーカーの施工資料でも、劣化した旧塗膜、ホコリ、油、樹液、コケなどを十分に除去し、乾燥した清浄な面に塗装するよう明記されています。
下地調整が不十分な場合、塗膜剥離や光沢不足、色むらにつながるとされています。
- ■ 外壁・屋根:高圧洗浄、ブラシ清掃、脆弱塗膜の除去
- ■ 鉄部:サビ落とし、目荒らし、脱脂
- ■ 木部:旧塗膜除去、毛羽立ち処理、研磨
- ■ アルミ・樹脂:目荒らし、脱脂、密着確認
洗浄やケレンは、完成すると見えなくなる工程です。
だからこそ、施工店の姿勢が表れます。
塗料のグレードより先に、塗る面をどこまで整えるか。
ここに仕上がりと耐久性の土台があります。
高性能な塗料を使っても、下地が汚れていれば本来の付着力は発揮できません。
4. 塗装が剥がれる原因2|下塗り塗料の選定ミス・塗り忘れ
下塗り塗料は、下地と上塗り塗料をつなぐ接着剤のような役割を持っています。
ところが、下塗りは一種類ではありません。
窯業系サイディング、モルタル、コンクリート、金属、木材、塩化ビニール、FRPでは、それぞれ適した下塗りが異なります。
吸い込みの激しい下地には浸透性シーラー、細かなひび割れがあるモルタルには微弾性フィラー、金属には防錆プライマー、付着しにくい素材には密着性を重視したプライマーが必要です。
たとえば、著しく風化したサイディングに下塗りを一回塗っただけでは、塗料が奥へ吸い込まれて表面に十分な下塗り膜が残らないことがあります。
この場合、表面が濡れ色になったから塗れていると判断するのではなく、乾燥後の状態を確認し、必要に応じて下塗りを二回行います。
下塗り一回が標準でも、傷んだ下地まで必ず一回で足りるとは限りません。
透明なシーラーは、乾燥すると塗った場所が分かりにくくなります。
悪質な施工では省略されても、完成直後の見た目だけでは判断しにくい工程です。
しかし、数年後に上塗り塗膜が広い範囲でペラペラと剥がれた場合、下塗り不足や下塗り選定の誤りが疑われます。
小林塗装では、商品名だけで下塗りを決めず、下地の材質、劣化状態、吸い込み、旧塗膜の種類まで確認したうえで仕様を組み立てることが大切だと考えています。
5. 塗装が剥がれる原因3|塗料同士や下地との相性が悪い
塗料には、水性、弱溶剤、強溶剤、一液型、二液型など、さまざまな種類があります。
さらに、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、無機有機複合など、樹脂の種類も多岐にわたります。
塗料は何でも自由に重ねられるわけではありません。
旧塗膜を強い溶剤が侵す、柔らかい塗膜の上に硬い塗膜を重ねる、非汚染型のシーリング材に塗装するなど、組み合わせによって付着不良や縮み、割れ、剥がれが生じます。
塗り替えでは、現在見えている外壁だけでなく、その下に過去の塗膜が何層も残っていることがあります。
古い弾性塗膜、溶剤に弱い塗膜、光触媒コーティング、フッ素系の難付着塗膜などは、一般的な塗装仕様では十分に密着しない場合があります。
このような場合は、目立たない場所で試し塗りを行い、乾燥後に付着性や縮みの有無を確認します。
シーリング材は、建物の動きに追従するため、外壁材より柔らかく設計されています。
その上に硬い塗膜を形成すると、シーリング材が伸び縮みしたときに塗膜が割れたり、端部から剥がれたりします。
また、シーリング材に含まれる可塑剤やブリード成分が塗膜へ移行し、ベタつきや汚染、付着不良を起こすこともあります。
塗料の性能表だけを見るのではなく、下地から上塗りまでを一つの塗装システムとして考えることが必要です。
6. 塗装が剥がれる原因4|乾燥時間不足・厚塗り・工程短縮
塗料には、次の工程へ進むまでに必要な塗り重ね乾燥時間があります。
表面を指で触って乾いているように見えても、塗膜内部では水分や溶剤の蒸発、樹脂の反応が続いています。
十分に乾燥・硬化する前に次の塗料を重ねると、内部に水分や溶剤が閉じ込められます。
その結果、膨れ、縮み、軟化、割れ、剥がれにつながることがあります。
職人の人数を増やして効率よく施工することはできます。
しかし、塗料そのものの乾燥時間を人数で短くすることはできません。
午前中に下塗りを行い、十分な乾燥を確認せず午後すぐに中塗りをする。
雨の合間に短時間で工程を詰め込む。
このような施工は、完成時にはきれいに見えても、塗膜内部に弱点を残します。
塗料は厚ければ厚いほど良いわけではありません。
一回で必要以上に厚く塗ると、表面だけが先に乾燥し、内部が乾きにくくなることがあります。
塗膜内部に溶剤や水分が残れば、後から気化して膨れを起こしたり、柔らかい状態が長く続いたりします。
塗膜の耐久性を決めるのは、厚塗りではなく、規定塗布量を複数回に分け、適切に乾燥させて形成した均一な膜厚です。
塗装工程は料理にも少し似ています。
強火で表面だけ焼いても、中まで火が通っていなければ良い仕上がりにはなりません。
7. 塗装が剥がれる原因5|雨・結露・高湿度・低温での施工
外壁塗装は、天候の影響を強く受ける工事です。
雨が降っているときだけ避ければよいわけではありません。
施工中に晴れていても、外壁が濡れていたり、夜露や結露が残っていたりすれば、密着不良につながります。
一般的な建築用塗料では、気温5℃以下、湿度85%以上の場合は施工を避けるよう定められている製品が多くあります。
メーカー資料にも、低温・高湿度や乾燥中の結露を避けることが示されています。
水性塗料は、水分が蒸発することで塗膜を形成します。
空気中の湿度が高い日は、水分が蒸発しにくく、乾燥が遅れます。
弱溶剤塗料でも、表面結露や湿気は付着不良や白化の原因になります。
天気予報の気温が5℃以上でも、日陰の北面や金属屋根の表面温度が低いことがあります。
また、夕方から急激に気温が下がると、乾燥途中の塗膜に結露が発生することもあります。
そのため、冬場は朝露が乾いてから作業を始め、夕方早めに塗装を終える判断が必要です。
予定どおりに工事を進めることも大切ですが、住まいを長く守るためには、塗らない判断をできることのほうが大切な日もあります。
8. 塗装が剥がれる原因6|建物内部や下地に残った水分
表面をきれいに洗浄し、正しい下塗りを使っても、下地内部に水分が残っていると塗膜が剥がれることがあります。
水分は温度が上がると水蒸気になり、外へ出ようとします。
しかし、表面が透湿性の低い塗膜で覆われていると、水蒸気が逃げられず、塗膜を内側から押し上げます。
これが、膨れや剥がれにつながります。
- ■ 高圧洗浄後の乾燥不足
- ■ 雨漏りやシーリングの破断
- ■ 外壁内部の結露
- ■ モルタルやコンクリートの乾燥不足
- ■ 屋根材内部へ吸い込まれた雨水
- ■ 地面や基礎からの毛細管吸水
住宅用化粧スレート屋根では、高圧洗浄後に屋根材内部へ水分が残る場合があります。
メーカー資料でも、洗浄後や降雨後は十分に乾燥させ、乾燥不足の状態で塗装すると、割れ、膨れ、剥がれが起こる可能性があるとされています。
外壁の同じ場所が何度補修しても膨れる場合、塗装面ではなく、笠木、サッシまわり、シーリング目地、配管貫通部などから水が入っている可能性があります。
この場合、塗装を剥がして塗り直すだけでは不十分です。
まず水の入口を特定し、防水処理を行い、下地を十分に乾燥させてから塗装します。
剥がれた場所と水が入った場所は、必ずしも同じではありません。
水は内部を伝って移動するため、少し離れた場所に症状が現れることもあります。
9. 塗装が剥がれる原因7|旧塗膜や下地材そのものの劣化
新しい塗料をどれだけ丁寧に塗っても、その下にある旧塗膜が弱ければ、旧塗膜ごと剥がれます。
たとえば、新しい壁紙を古く傷んだ壁紙の上へ貼った場合、接着剤が強くても、下の壁紙ごと落ちることがあります。
塗装も同じです。
旧塗膜が手で触ると粉状になったり、スクレーパーで簡単に剥がれたりする場合、その上へ塗装することはできません。
弱い塗膜を可能な範囲で除去し、残った部分の付着状態を確認します。
旧塗膜の剥離が広範囲に及ぶ場合は、部分補修ではなく全面的な剥離や、改修工法そのものの見直しが必要になることもあります。
窯業系サイディングは、吸水と乾燥を繰り返すことで表層が弱くなることがあります。
寒冷地では凍害、日当たりの強い場所では乾湿の繰り返し、シーリング破断部では雨水の浸入によって、表面が層状に剥がれることがあります。
モルタルやコンクリートでも、中性化、浮き、爆裂、エフロレッセンスなどが進行している場合、塗装だけでは直せません。
下地が傷んでいるのに塗料だけを高級にしても、耐久性は上がりません。
補修、張り替え、左官処理、防水処理など、塗装前の下地再生が必要です。
10. 塗装が剥がれる原因8|サビ・塩分・油分・離型剤などの付着
塗装面に目に見えない異物が残っていると、塗料の密着を妨げます。
代表的なものが、油分、ワックス、シリコーン、塩分、離型剤です。
鉄はサビると体積が膨張します。
塗膜の下でサビが進行すると、塗膜を内側から持ち上げ、やがて浮きや剥がれになります。
表面だけを軽くこすり、赤サビを残したまま錆止めを塗っても、サビの進行を十分に止められません。
特に雨戸、戸袋、鉄骨階段、庇、手すり、折板屋根では、継ぎ目、ボルト、端部、溶接部を入念に処理します。
海に近い地域では、空気中の塩分が外壁や鉄部へ付着します。
塩分が残った状態で塗装すると、吸湿性によって塗膜下に水分を呼び込み、サビや膨れを促進することがあります。
新しい金属製品には加工油、防錆油、保護ワックスなどが残っている場合があります。
樹脂製品や成型品には、製造時の離型剤が付着していることもあります。
そのまま塗ると、数日から数か月で塗膜がシート状に剥がれることがあります。
見た目がきれいな新品ほど、何も処理せず塗れると思われがちですが、塗装では「きれいに見えること」と「塗料が密着すること」は別問題です。
11. 塗装が剥がれる原因9|塗布量・希釈率・混合比の間違い
塗料は、メーカーが定めた塗布量、希釈率、混合比に基づいて使用することで、予定された性能を発揮します。
ローラーを軽く動かしたい、塗料を伸ばしたい、材料費を抑えたいなどの理由で過度に希釈すると、必要な膜厚が確保できません。
樹脂や顔料の密度が低くなり、隠ぺい力、耐候性、付着性が不足する可能性があります。
二液型塗料は、主剤と硬化剤を正しい比率で混ぜ、化学反応によって硬化します。
硬化剤が少なすぎると塗膜が十分に硬化せず、ベタつきや軟化、付着不良が起こります。
逆に多すぎても、正常な塗膜性能を発揮できるとは限りません。
また、混合後に使用できる時間には限りがあります。
可使時間を過ぎた塗料を使用すると、見た目は塗れても、正常な塗膜を形成できないことがあります。
外壁の凹凸、吸い込み、ローラーの種類、希釈率、残材量によって、実際の塗布量は変わります。
大切なのは、施工面積とメーカーの標準所要量を照らし合わせ、必要缶数を事前に計算することです。
塗料を何回塗ったかだけでなく、一回ごとに必要な量を塗れているかが重要です。
12. 塗装が剥がれる原因10|建物の動きや素材の伸縮
建物や建材は、完全に動かないものではありません。
気温の変化、乾燥と吸湿、風圧、地震、交通振動などにより、わずかに伸び縮みしています。
塗膜がその動きに追従できないと、ひび割れが生じ、そこから剥がれへ進むことがあります。
金属屋根や金属サイディングは、真夏の日差しで高温になり、夜間には冷えます。
この温度差によって素材が伸縮し、ボルトまわり、継ぎ目、折り曲げ部などに力が集中します。
下地処理不足や硬すぎる塗膜では、その動きに耐えきれず剥がれることがあります。
木材は湿気を吸うと膨らみ、乾燥すると縮みます。
その動きは、モルタルや金属より複雑です。
さらに、木材内部からヤニ、水分、空気が出ることもあり、塗膜型の塗料では割れや剥がれが起こりやすくなります。
木部には、木材の状態や用途に応じて、浸透型木材保護塗料、半造膜型塗料、造膜型塗料を使い分けます。
素材の動きを無理に止めるのではなく、その動きに合った塗料と工法を選ぶことが長持ちのポイントです。
13. 部位別に見る塗装が剥がれる原因
塗装の剥がれは、塗る部位によって起こりやすい原因が異なります。
| 部位 | 主な剥離原因 | 補修時の重要ポイント |
|---|---|---|
| 窯業系サイディング | チョーキング、吸水、表層劣化、難付着塗膜 | 旧塗膜確認、含水率、適合下塗り |
| モルタル外壁 | ひび割れ、漏水、アルカリ、水分 | クラック補修、乾燥、透湿性 |
| スレート屋根 | 洗浄不足、水分、基材劣化、縁切り不足 | 十分な乾燥、下塗り回数、縁切り |
| 金属屋根・鉄部 | サビ、油分、ケレン不足、熱伸縮 | 除錆、脱脂、防錆下塗り |
| 木部 | 含水率、ヤニ、木材の動き、表層風化 | 研磨、乾燥、塗料種類の選定 |
| 塩化ビニール | 可塑剤、目荒らし不足、下塗り不適合 | 脱脂、試し塗り、対応プライマー |
| FRP | 表面が硬く平滑、ワックス、研磨不足 | 脱脂、研磨、専用プライマー |
外壁では、下塗り不足、旧塗膜の劣化、水分、シーリングまわりの動きなどが主な原因です。
特定の一面だけ剥がれている場合は、日当たり、雨掛かり、漏水経路、過去の部分補修なども確認します。
屋根は紫外線と熱の影響が強く、外壁より厳しい環境にあります。
高圧洗浄後の乾燥不足、下塗りの吸い込み、旧塗膜の脆弱化、基材の劣化が重なると、広範囲に剥がれることがあります。
スレート屋根では、重なり部を塗料で塞ぐと通気や排水を妨げ、結露水や滞留水によって膨れ、剥離、素材の腐食につながるおそれがあります。
必要に応じて縁切りやタスペーサーによる隙間確保を行います。
鉄部では、サビを十分に除去していないことが大きな原因です。
また、表面が滑らかな亜鉛メッキ、アルミ、ステンレスなどは、一般的な鉄部用下塗りでは密着しにくいことがあります。
木部は、素材自体が呼吸するように水分を出し入れします。
特に破風板、鼻隠し、窓枠、ウッドデッキでは、木口や継ぎ目から水が入りやすく、塗膜の内側から押し上げることがあります。
部位ごとの性質を理解せず、すべて同じ塗料、同じ工程で施工することはできません。
14. 塗装の剥がれは施工不良?経年劣化との見分け方
塗装が剥がれると、「これは施工不良ではないか」と疑いたくなるものです。
実際に、施工後一年から三年程度で広範囲に剥がれた場合は、下地処理、下塗り、乾燥、塗料の相性など、施工上の問題を確認する必要があります。
ただし、剥がれが起きたからといって、すべてが施工不良とは限りません。
| 確認項目 | 施工不良が疑われる状態 | 経年劣化が疑われる状態 |
|---|---|---|
| 発生時期 | 施工後数か月~3年程度 | 耐用年数に近づいてから徐々に発生 |
| 剥がれ方 | 広範囲にシート状、同じ層で剥離 | 日当たりや雨掛かりの強い部分から進行 |
| 塗膜の状態 | 新しい塗膜だけが簡単に剥がれる | 塗膜全体が硬化、粉化、ひび割れ |
| 下地 | 汚れ、粉、旧塗膜が残っている | 下地材自体の風化や吸水が進んでいる |
| 発生範囲 | 施工方法に対応した規則的な範囲 | 環境条件に応じた不規則な範囲 |
施工後早い時期に剥がれを見つけた場合は、剥がれた場所、範囲、日時を写真で残してください。
剥離片が落ちている場合は、捨てずに保管すると原因調査に役立つことがあります。
また、契約書、見積書、使用塗料、施工写真、保証書も確認します。
感情的に責任を追及する前に、剥がれた層と原因を客観的に調査することが、適切な解決への近道です。
誠実な施工店であれば、現地を確認し、原因と補修方法を説明するはずです。
15. 塗装の剥がれを放置した場合に起こること
塗膜が剥がれても、すぐに雨漏りするとは限りません。
しかし、保護膜を失った下地は、雨水や紫外線の影響を直接受けます。
- ■ 外壁材が水を吸い、反りやひび割れが進む
- ■ 鉄部のサビが急速に広がる
- ■ 木部が腐朽し、塗装では直せなくなる
- ■ モルタルやコンクリートが中性化する
- ■ 凍結と融解によって表層が剥がれる
- ■ 補修範囲が広がり、工事費が高くなる
特に鉄部と木部は、剥がれを放置した期間によって補修方法が大きく変わります。
初期であればケレンと再塗装で直せても、鉄板に穴が開けば板金交換、木材が腐れば大工工事が必要です。
外壁材も、表面の補修で済む段階を過ぎると、部分張り替えや全面張り替えになる場合があります。
剥がれを見つけたら、慌てる必要はありませんが、先延ばしにもしない。
このくらいの距離感がちょうど良いと思います。
16. 塗装が剥がれたときの正しい補修方法
塗装の剥がれを補修するときは、単に剥がれた場所へ同じ色を塗るのではなく、原因を取り除いてから塗膜を再構築します。
- ■ 1. 剥がれた範囲と水分経路を調査する
- ■ 2. 浮いている塗膜と脆弱な下地を除去する
- ■ 3. サビ、油分、カビ、塩分などを除去する
- ■ 4. ひび割れ、欠損、漏水箇所を補修する
- ■ 5. 下地を十分に乾燥させる
- ■ 6. 素材と旧塗膜に合う下塗りを施工する
- ■ 7. 必要な膜厚を確保して中塗り・上塗りを行う
目に見えて剥がれている部分だけを削ると、その周囲に残った浮き塗膜が後から剥がれることがあります。
スクレーパー、皮スキ、打診などで周辺の付着状態を確認し、健全な塗膜との境界まで除去します。
旧塗膜を剥がすと、健全な塗膜との間に段差が生じます。
そのまま塗ると、補修跡が輪郭のように浮き出ます。
研磨やフィラー、補修材で段差をなだらかにし、既存の模様に合わせてパターンを復元します。
外壁全体の旧塗膜が弱っている場合、部分補修を繰り返しても別の場所から剥がれます。
その場合は、可能な範囲で旧塗膜を除去し、全面的に下地を整える改修仕様が必要です。
剥離範囲が非常に広い場合や有害物質を含む古い塗膜では、湿式剥離など、飛散を抑えた専門工法を検討することもあります。
補修範囲を小さく見積もることより、再発しない範囲まで処理することが大切です。
17. 塗膜剥離の補修費用と見積りの注意点
塗装の剥がれ補修費用は、剥がれた面積だけでは決まりません。
原因調査、足場、旧塗膜の除去方法、下地補修、使用塗料、模様合わせなどによって大きく変わります。
| 補修内容 | 費用が変わる主な要因 |
|---|---|
| 小さな部分補修 | 作業位置、色合わせ、下地状態 |
| 外壁一面の補修 | 足場、剥離範囲、模様復元 |
| 屋根の剥離補修 | 勾配、下地劣化、旧塗膜除去 |
| 鉄部の剥離補修 | サビの深さ、穴あき、交換の有無 |
| 木部の剥離補修 | 腐朽、含水率、部材交換の有無 |
| 全面剥離 | 塗膜の厚み、材質、剥離工法、廃棄物処理 |
二階部分や屋根付近の剥がれは、安全に作業するため足場が必要です。
剥がれた面積が小さくても、足場費用が加わるため、補修費用が高く感じられることがあります。
見積りを比較するときは、金額だけでなく、次の内容を確認してください。
- ■ 剥離原因をどのように判断したか
- ■ どこまで旧塗膜を除去するか
- ■ 漏水や下地水分の調査を行うか
- ■ 使用する下塗り塗料は何か
- ■ 補修後の模様合わせを行うか
- ■ 補修部分に保証があるか
表面へ一回塗料を塗るだけなら、費用を安く見せることはできます。
しかし、原因が残っていれば再発します。
適正価格とは、原因を調べ、必要な工程を省かず、補修後の耐久性まで考えた価格です。
18. 塗装の剥がれを再発させないためのポイント
塗膜剥離を防ぐためには、高価な塗料を選ぶことより、塗装前から塗装後までの工程管理が重要です。
外壁材の種類、旧塗膜、含水状態、チョーキング、ひび割れ、サビ、漏水などを確認します。
特に塗り替え履歴が分からない建物では、試し塗りや付着性確認が有効です。
完成後に見えなくなる高圧洗浄、ケレン、補修、下塗りの写真を残します。
施工写真は、お客様への説明資料であると同時に、職人自身が工程を確認する品質管理記録です。
塗布量、乾燥時間、希釈率、施工可能な温湿度は、製品仕様を守ります。
そのうえで、下地の吸い込みが強ければ下塗りを追加するなど、現場の状態に応じて必要な工程を補います。
外からの雨だけでなく、壁内結露、屋根裏の湿気、地面からの吸水も考慮します。
必要に応じて、透湿性のある塗料、通気を妨げない納まり、縁切りなどを採用します。
施工後に小さな浮きやひび割れを早期発見できれば、大きな剥離へ進む前に補修できます。
良い塗装工事は、塗り終えた瞬間ではなく、その後の年月で評価されます。
塗料の名前だけでなく、誰が、どのように下地を整え、どのような判断で工程を進めるかを確認してください。
19. まとめ|塗装の剥がれは表面ではなく原因から直すことが大切です

塗装が剥がれる原因は、単純な経年劣化だけではありません。
高圧洗浄やケレン不足、下塗りの選定ミス、塗料の相性、乾燥時間不足、雨や結露、下地内部の水分、旧塗膜の劣化、サビ、油分、希釈率、建物の動きなど、さまざまな要因が関係します。
なかには、複数の原因が重なっていることも珍しくありません。
たとえば、外壁内部へ雨水が入り、旧塗膜が弱くなったところへ、適合しない下塗りを塗装した場合です。
このケースでは、表面の剥がれだけを補修しても再発します。
塗膜剥離を正しく補修するためには、次の順序が大切です。
- ■ 剥がれた層を確認する
- ■ 水分や漏水の有無を確認する
- ■ 弱い塗膜と下地を除去する
- ■ 素材に合った補修と下塗りを行う
- ■ 規定塗布量と乾燥時間を守る
塗装工事は、完成した色や艶だけを見ると、とても華やかな仕事です。
しかし、本当の耐久性を支えているのは、塗装後には見えなくなる洗浄、ケレン、乾燥確認、下塗り、補修といった地道な工程です。
まるで上質な服の仕立てと同じで、表からは見えない縫い代や芯地にこそ、長くきれいに着られる理由があります。
小林塗装では、剥がれた部分へすぐ塗料を塗るのではなく、まず原因を確認します。
外壁材、屋根材、旧塗膜、含水状態、周辺の防水納まりまで確認し、必要な補修方法を分かりやすくご説明します。
塗装の剥がれは、早い段階で原因を見つければ、補修範囲と費用を抑えられる可能性があります。
「少しだけ剥がれているけれど大丈夫?」「前回塗装してから数年しか経っていない」「同じ場所が何度も膨れる」といった場合も、どうぞお気軽にご相談ください。
住まいの状態を正直に確認し、塗装が必要な場合も、まだ急がなくてよい場合も、専門店として誠実にお伝えします。
20. 塗装の剥がれに関するQ&A

小さな剥がれでも、下地が露出している場合は早めの点検をおすすめします。
すぐに建物全体へ深刻な被害が出るとは限りませんが、雨水や紫外線が下地へ直接当たるため、剥がれが広がることがあります。
特に鉄部、木部、サイディング端部の剥がれは、サビ、腐朽、吸水へ進みやすいため注意が必要です。
施工不良の可能性はありますが、現地調査をせずに断定はできません。
下地処理不足、下塗りの不適合、乾燥不足などのほか、既存塗膜の劣化、漏水、下地材の表層剥離が原因の場合もあります。
剥がれた層、剥離片の裏側、発生範囲を確認し、施工記録や使用材料と照らし合わせて判断します。
一時的に見た目を整えることはできますが、原因が分からないまま塗り重ねるのはおすすめできません。
浮いた塗膜を残したまま塗ると、新しい塗料も一緒に剥がれます。
また、塗料の相性が悪いと、縮み、ベタつき、色むらが発生するため、まず専門店へ相談するほうが安心です。
高圧洗浄は汚れや脆弱塗膜を除去する工程であり、洗浄だけで剥がれが直るわけではありません。
洗浄後に付着状態を確認し、必要に応じてケレン、補修、下塗り、中塗り、上塗りを行います。
水圧を強くしすぎると、傷んだ外壁材を削ったり、隙間から水を入れたりするため、素材に合った圧力調整も重要です。
共通する原因もありますが、必ずしも同じではありません。
膨れは、塗膜内部の水分、溶剤、空気などが塗膜を内側から押し上げることで起こります。
膨れが破れると剥がれになりますが、剥がれは洗浄不足や下塗り不良など、水分を伴わない付着不良でも起こります。
屋根材の状態によって異なります。
旧塗膜だけが弱っている場合は、脆弱塗膜を除去して再塗装できることがあります。
一方、屋根材自体が著しく劣化している場合、塗装では十分な耐久性を確保できず、カバー工法や葺き替えを検討することがあります。
屋根は見えにくい場所だからこそ、塗装ありきではなく、基材の状態から判断することが大切です。
サビ、油分、旧塗膜、素材との相性が主な原因として考えられます。
特に、サビを十分に除去せず、その上から錆止め塗料を塗ると、塗膜の下で腐食が進みます。
亜鉛メッキ、アルミ、ステンレスなどは鉄とは性質が異なるため、専用下塗りや付着性試験が必要です。
木材は水分を吸ったり吐いたりしながら伸縮するためです。
さらに、木口や継ぎ目から雨水が入りやすく、内部水分が塗膜を押し上げることがあります。
木部の状態に応じて、浸透型塗料と造膜型塗料を使い分け、木材の含水状態を確認して施工します。
既存塗膜が色あせている場合、同じ色番号の塗料を使っても補修部分が目立つことがあります。
また、ローラーの毛丈、塗り方、艶、外壁の凹凸によっても見え方が変わります。
美観を重視する場合は、補修箇所だけでなく、目地や角まで一面を通して塗装する方法が適しています。
保証の有無や期間は、施工店、下地状態、補修範囲によって異なります。
既存塗膜が全面的に弱っている場合、部分補修だけでは周辺の剥がれまで保証できないことがあります。
保証期間だけでなく、対象範囲、免責条件、再発時の対応方法を契約前に確認しましょう。
フッ素塗料や無機有機複合塗料など、高耐候な塗料はあります。
ただし、高級塗料を使えば剥がれないわけではありません。
下地処理、下塗り、乾燥時間、塗布量、塗料の相性が適切でなければ、高耐候塗料でも剥がれます。
塗料のグレードより先に、下地と施工品質を整えることが基本です。
建物の築年数、前回の塗装時期、使用塗料が分かれば伝えてください。
剥がれを見つけた時期、雨漏りの有無、過去の補修履歴も原因調査の手掛かりになります。
写真を送る場合は、剥がれ部分の近接写真だけでなく、建物全体と周辺部位が分かる写真もあると判断しやすくなります。
コラム筆者
小林塗装 店主 小林ゆず
塗装職人として30年以上、一般住宅を中心に外壁塗装、屋根塗装、防水工事、シーリング工事、鉄部塗装、木部塗装などに携わり、2,000件以上の施工実績を重ねてきました。
塗装工事では、塗料の知名度や価格だけでなく、建物の材質、劣化状態、周辺環境、お客様のご要望に合った施工仕様を組み立てることを大切にしています。
特に、完成後には見えなくなる下地調整、補修、養生、下塗り、乾燥時間を重視し、職人として長く安心していただける仕上がりを目指しています。
色選びでは、外壁単体の色だけでなく、屋根、玄関ドア、サッシ、植栽、周辺住宅との調和まで考え、上品で住まいらしいカラーコーディネートをご提案します。
外壁や屋根の剥がれ、膨れ、ひび割れなど、気になる症状がございましたら、名古屋の塗装店小林塗装までお気軽にご相談ください。
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