外壁塗装会社の経営が厳しくなる理由|売上があっても利益が残らない構造
「外壁塗装は定期的に必要になる工事だから、塗装会社は比較的安定しているのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、外壁や屋根は紫外線、雨、風、熱、湿気などの影響を受け続けるため、住宅が存在する限り、塗り替えや補修の需要が完全になくなることはありません。
ところが実際の塗装会社の経営は、それほど単純ではありません。
塗料、副資材、足場、燃料、車両、人件費、社会保険料などの原価は上昇する一方で、お客様の家計も物価高の影響を受けています。
そのため、施工会社が必要な値上げを行おうとしても、簡単には理解を得にくい状況があります。
さらに、職人不足、集客費の高騰、価格競争、手直し工事、入金と支払いの時間差などが重なると、仕事はあるのに、利益と現金が残らないという不思議な状態に陥ります。
2025年には、建設業の倒産が2,021件に達し、売上を伸ばしていた企業が運転資金の増加に耐えられなくなった事例も確認されています。
これは、仕事がない会社だけが経営難になるわけではないことを示しています。
むしろ注意したいのは、受注件数を追いかけるあまり、工事一件ごとの採算、職人の疲労、品質管理、資金繰りが見えなくなってしまうことです。
アクセルを踏み続けているのに、燃料計を見ていない車のようなもの。
速く走っているからこそ、止まったときの衝撃も大きくなります。
そこで今回のコラムでは、外壁塗装会社の経営が厳しくなる理由を、単なる「不景気」や「売上不足」で片づけず、原価、利益、人材、集客、品質、組織、資金繰りという複数の角度から深掘りします。
これから外壁塗装を検討される方にとっても、長く責任を持って工事を続けられる会社を見極める参考になれば幸いです。
- ■ 外壁塗装会社の経営が厳しくなる主な原因
- ■ 売上が増えているのに利益が残らない理由
- ■ 塗料代・人件費・集客費の上昇が与える影響
- ■ 安売りや過剰な値引きが施工品質を圧迫する仕組み
- ■ 職人不足と技能継承が経営に与える影響
- ■ 手直し・クレーム・現場管理不足による損失
- ■ 黒字でも資金が足りなくなる「黒字倒産」の仕組み
- ■ 健全な外壁塗装会社を見分けるポイント
1. 外壁塗装会社の経営が厳しくなる理由|結論から解説
結論から申し上げると、外壁塗装会社の経営が厳しくなる最大の理由は、売上、利益、現金、人材、品質を一つの数字として考えてしまうことです。
売上が増えれば、会社が順調に成長しているように見えます。
しかし、売上高は会社に入ってくるお金の総額であり、そのまま利益になるわけではありません。
そこから塗料代、足場代、シーリング材、副資材、職人の給与、外注費、車両費、燃料費、広告費、事務所費、保険料、税金などを支払います。
さらに、工事が終わったあとに手直しが発生すれば、追加の材料費と人件費が必要です。
雨天が続けば予定していた工事が進まず、売上は翌月へずれ込みます。
それでも給与、家賃、車両代、保険料などの固定費は待ってくれません。
- ■ 塗料・副資材・燃料・足場代の上昇
- ■ 職人の給与・社会保険料・採用費の増加
- ■ 安売り会社との価格競争
- ■ 広告費・紹介手数料・営業歩合の増加
- ■ 現場管理不足による手直しとクレーム
- ■ 工事代金の入金と支払い時期のずれ
- ■ 受注件数を優先した過密工程
- ■ 経営者一人に判断が集中する属人経営
一つひとつは小さな問題に見えても、同時に重なると会社の体力をじわじわ奪います。
外壁塗装会社の経営は、塗料を仕入れて塗るだけではありません。
天候、建物の劣化状態、職人の技量、お客様との打ち合わせ、近隣配慮、安全管理など、数字だけでは測りにくい要素を抱えています。
(塗料缶の数だけを数えていても、現場の苦労までは見えてきません)
だからこそ、経営を安定させるには、工事一件ごとの原価と利益だけでなく、品質、時間、人材、信用まで含めて管理する必要があります。
2. 外壁塗装会社の経営を圧迫する原価上昇
外壁塗装会社の経営を考えるうえで、最初に確認したいのが原価の上昇です。
外壁塗装の原価には、塗料だけでなく、シーリング材、養生材、ローラー、刷毛、マスカー、研磨材、洗浄機の燃料、車両費、足場費、廃材処分費などが含まれます。
一つの資材が数%上がっただけなら、それほど大きな影響はないように見えるでしょう。
しかし、ほぼすべての資材と経費が少しずつ上昇すると、工事一件当たりの原価は想像以上に膨らみます。
外壁用塗料の価格が上がると、施工会社は見積価格へ反映しなければなりません。
ところが実際には、価格表を何年も更新していない会社や、「以前と同じ価格でお願いします」と言われて値上げできない会社もあります。
塗料代が一缶当たり数千円上がり、下塗り材、硬化剤、シンナー、シーリング材、養生材も値上がりすれば、一棟分では数万円から十数万円の差になることがあります。
その差額を見積りへ反映できなければ、施工会社が自社の利益から負担することになります。
塗装工事は、機械だけで完結する仕事ではありません。
高圧洗浄、下地調整、シーリング、養生、下塗り、中塗り、上塗り、付帯部塗装、清掃、検査まで、多くの工程を職人の手で積み重ねます。
そのため、職人の給与が上がると工事原価へ直接影響します。
さらに会社が職人を雇用する場合は、給与だけでなく、社会保険料、労災保険、雇用保険、健康診断、作業服、安全用品、工具、車両なども負担します。
職人本人が受け取る日当と、会社が負担する一人工当たりの労務原価は同じではありません。
| 原価項目 | 主な内容 | 経営への影響 |
|---|---|---|
| 塗料・副資材 | 下塗り材、上塗り材、シーリング材、養生材 | 工事一件ごとの直接原価が増える |
| 労務費 | 給与、賞与、残業代、法定福利費 | 毎月継続して発生する |
| 足場費 | 足場組立、解体、メッシュシート、運搬 | 建物形状や敷地条件で増減する |
| 車両・燃料 | 作業車、ガソリン、修理、保険、駐車場 | 現場数が増えるほど負担が増える |
| 安全管理費 | 保護具、誘導員、道路使用、安全教育 | 削減してはいけない必要経費 |
| 廃材処理費 | 空缶、養生材、撤去材、廃シーリング材 | 適正処理に費用がかかる |
原価が上がったからといって、必要な塗布量を減らしたり、下地処理を省略したりすることは、本来あってはなりません。
健全な経営とは、必要な品質を落とさず、その品質を維持できる適正価格をお客様へ誠実に説明することです。
3. 外壁塗装の安売りと値引き競争が利益を消していく
外壁塗装会社の経営が厳しくなる原因として、避けて通れないのが安売りと過剰な値引きです。
お客様にとって、工事費用が少しでも安いことは魅力の一つです。
私たち施工会社も、無駄な経費を抑え、できるだけお値打ちな価格で提供する努力は必要だと考えています。
ただし、お値打ち価格と原価を無視した安売りは、まったく別のものです。
外壁塗装を長持ちさせるには、高圧洗浄、乾燥、下地補修、シーリング、養生、下塗り、中塗り、上塗りといった基本工程が必要です。
さらに、塗料メーカーが定める塗布量、希釈率、乾燥時間、施工可能な気温と湿度を守らなければ、塗料本来の性能は十分に発揮されません。
見積価格を下げるために、これらの工程や使用量を減らせば、短期的には利益を確保できるかもしれません。
しかし、数年後に剥がれ、膨れ、色むら、早期のチョーキングが発生すれば、補修費用と信用低下という、さらに大きな損失が返ってきます。
100万円の見積りから、理由もなく20万円を値引きできるとしたら、その20万円はどこから出るのでしょうか。
- ■ 最初から高めの金額を設定していた
- ■ 会社の利益を大幅に削った
- ■ 材料や工程を減らす予定がある
- ■ 職人や下請け会社へ負担を押しつける
- ■ 別の追加工事で回収する予定がある
もちろん、足場の共用、工事時期の調整、施工範囲の変更など、合理的な理由があれば価格を下げられる場合もあります。
大切なのは、値引き額の大きさではなく、なぜその価格で工事が成立するのかという説明です。
利益を確保することは、施工会社のぜいたくではありません。
職人の給与、工具の更新、車両整備、安全教育、施工後の保証対応を続けるために必要なものです。
利益を悪者にするのではなく、品質と責任を維持するための必要経費として、透明性のある説明を行うことが大切です。
4. 売上が増えても外壁塗装会社の経営が苦しくなる理由
「売上が伸びている会社なら、経営も順調なのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、建設業では、売上の増加がそのまま経営の安定につながるとは限りません。
むしろ採算の低い工事を大量に受注すると、売上が増えるほど資金繰りが苦しくなることがあります。
工事を始めるには、塗料、シーリング材、足場、養生材などを手配しなければなりません。
職人の給与や外注費も、工事代金を全額受け取る前に支払うことがあります。
つまり、一か月に3棟施工していた会社が急に10棟施工するようになると、売上だけでなく、先に支払う運転資金も大きく増えます。
入金より支払いが先行すれば、帳簿上は利益が出ていても、銀行口座の残高が足りなくなることがあります。
これが、いわゆる黒字倒産につながる仕組みの一つです。
現場が多くなると、経営者も職人も忙しくなります。
朝から現場を回り、見積りを作り、電話に対応し、夜に翌日の段取りを組む。
そのような毎日が続くと、工事ごとの原価集計や入金確認が後回しになりやすくなります。
忙しいため会社が繁盛しているように感じても、決算を見たらほとんど利益が残っていなかった、ということも珍しくありません。
(忙しいことと、もうかっていることは、似ているようで別の話です)
経営を安定させるには、売上高だけでなく、次の数字を確認する必要があります。
- ■ 工事一件ごとの売上総利益
- ■ 職人一人一日当たりの生産性
- ■ 手直しに使った材料費と人工数
- ■ 契約から入金までの日数
- ■ 毎月の固定費と現預金残高
- ■ 未入金工事と支払予定額
受注を増やす前に、今の体制で品質と利益を守れるかを確認すること。
派手な成長よりも、一件一件を確実に完工し、利益と信用を積み重ねる会社の方が、長期的には強いと考えます。
5. 外壁塗装会社の集客費が高騰している
外壁塗装会社の経営を圧迫する大きな要因の一つが、集客費の上昇です。
以前は、地域でまじめな仕事を続け、紹介や口コミを積み重ねれば、一定の相談をいただける会社も少なくありませんでした。
現在は、ホームページ、検索広告、比較サイト、ポータルサイト、チラシ、SNS、動画など、集客方法が増えています。
選択肢が増えたこと自体は良いことですが、競争が激しくなるほど、一件のお問い合わせを得るための費用も高くなります。
一括見積りサイトや紹介会社を利用すると、自社だけでは出会えなかったお客様とつながれる利点があります。
一方で、紹介料、契約手数料、月額掲載料などが発生する場合があります。
仮に一件の契約を獲得するために複数件の紹介料が必要であれば、その費用は最終的に会社の利益か工事価格から支払われます。
紹介手数料自体が悪いわけではありません。
問題は、集客にいくら使い、施工にいくら残せるのかを把握していないことです。
広告費をかけると、「今月は何件契約できたか」という数字が気になります。
その結果、値引き、キャンペーン、即決特典などを多用し、採算の悪い工事まで受注してしまうことがあります。
さらに、広告で約束した内容と現場の施工体制が合っていなければ、お客様の期待と実際の工事に差が生まれます。
集客は、契約を取ることがゴールではありません。
相談、現地調査、提案、契約、施工、完工、点検まで一貫して満足していただき、初めて意味があります。
良い集客とは、たくさんの人を集めることではなく、自社の仕事や価値観に合うお客様と丁寧につながることです。
6. 営業力ばかり強く施工力が追いつかない問題
外壁塗装会社には、大きく分けて、施工を中心に成長してきた会社と、営業や集客を中心に成長してきた会社があります。
どちらが良い、悪いという単純な話ではありません。
施工会社にも説明力や提案力が必要ですし、営業力の高い会社でも、施工管理を徹底している会社はあります。
問題は、受注する力と施工する力のバランスが崩れることです。
- ■ 着工までの待ち時間が長くなる
- ■ 現場ごとの打ち合わせが不十分になる
- ■ 応援職人や新規下請けへの依存が増える
- ■ 現場監督が十分に巡回できなくなる
- ■ 色、仕様、補修範囲の伝達ミスが増える
- ■ 工期短縮の圧力が強くなる
- ■ 完工検査と手直し確認が粗くなる
外壁塗装は、契約書と塗料缶を現場へ届ければ完成する工事ではありません。
建物ごとに素材、劣化、雨仕舞い、日当たり、周辺環境が異なります。
それらを理解せず、同じ仕様を横流しするように施工すれば、下塗り材の選定ミス、シーリングの施工不良、膨れ、剥がれなどにつながります。
営業担当者がお客様から伺った希望が、職人へ正確に伝わっていなければ、工事はうまくいきません。
塗装色、艶、塗り分け、補修方法、使用塗料、施工しない部分、注意する植栽、駐車位置、近隣への配慮など、共有すべき情報は数多くあります。
受注件数を増やす前に、作業指示書、写真、図面、色番号、工程表を整備することが必要です。
良い営業とは、工事を売ることだけでなく、現場が約束を守れる状態をつくることでもあります。
7. 塗装職人の人手不足と高齢化
塗装会社の経営を中長期的に考えるうえで、最も重い課題の一つが職人不足です。
国土交通省の資料では、2024年の建設業就業者のうち55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまっています。
経験豊富な職人が引退していく一方で、若い世代の入職が少なければ、会社の施工能力は徐々に低下します。
塗装職人は、ローラーで色を塗れるだけでは務まりません。
素材の見極め、劣化診断、塗料の調合、希釈、乾燥判断、刷毛とローラーの使い分け、養生、下地処理、安全作業など、多くの知識と経験が必要です。
一人前になるには、実際の現場で失敗と改善を繰り返しながら、感覚と理論の両方を身につけなければなりません。
新人を採用しても、すぐにベテランと同じ生産性を求めれば、教育する側も、教わる側も疲れてしまいます。
職人が足りない状態で受注を増やすと、一人の職人が複数の現場を行き来するようになります。
すると、塗料を塗ってすぐ別の現場へ移動し、翌日に確認したら塗り残しがあった、というような管理不足が起きやすくなります。
また、天候不良で工程が遅れた際に、次の現場が詰まっていると、乾燥時間を十分に確保できない心理的な圧力も生まれます。
塗装会社は、受注可能な件数を職人数だけで判断してはいけません。
建物の大きさ、補修量、天候、移動時間、検査時間、休日まで含めて、無理のない工程を組む必要があります。
職人不足の時代には、たくさん受注する会社よりも、施工能力に合わせて仕事を選べる会社の方が、品質と経営を守りやすくなります。
8. 職人が定着しない塗装会社の共通点
人手不足というと、応募者が少ないことばかり注目されます。
しかし、本当に考えなければならないのは、採用した職人が長く働ける会社になっているかどうかです。
採用しても次々に辞めてしまえば、募集費、教育時間、作業服、工具などの費用が繰り返し発生します。
- ■ 作業指示が毎回変わる
- ■ 失敗だけを責め、改善方法を教えない
- ■ ベテラン職人の感覚だけで教育する
- ■ 給与や評価の基準が分かりにくい
- ■ 無理な工程と休日出勤が続く
- ■ 道具や安全用品を十分に用意しない
- ■ 良い仕事をしても評価されない
- ■ 経営者と現場の考えが離れている
職人は、単に手を動かす労働力ではありません。
お客様の住まいを実際に仕上げ、会社の評判をつくる重要な存在です。
職人を大切にするとは、甘やかすことではありません。
守るべき施工基準、時間、マナー、安全ルールを明確にし、そのうえで技術向上を支えることです。
「見て覚えろ」という教育だけでは、技能継承がうまく進まない時代になっています。
写真付きの施工基準書、作業指示書、材料の使用量表、失敗事例の共有、完工検査表などを整備すれば、新人も学びやすくなります。
職人の技術を言葉と仕組みに変えることは、会社の大切な資産づくりです。
人材が定着する会社は、採用費を抑えられるだけでなく、現場の連携、品質、工期、顧客満足も安定しやすくなります。
9. 現場管理不足と手直し工事が経営を圧迫する
外壁塗装会社の利益を静かに削っていくのが、手直し工事です。
少しの塗り残しや養生漏れであっても、職人が再訪問すれば、移動時間、燃料、材料、人工が必要になります。
足場を解体したあとに高所の不具合が見つかれば、部分足場や高所作業車が必要になる場合もあります。
手直し一件に二人の職人が半日かかるとします。
その日は予定していた別の現場が進まず、車両と材料も必要です。
このような手直しが毎月何件も続けば、年間では大きな損失になります。
しかも、手直し費用は当初の見積りへ追加請求できないことがほとんどです。
施工不良が起きると、「担当職人が悪かった」と考えがちです。
もちろん、職人本人の確認不足が原因になることもあります。
しかし、同じ失敗が繰り返される場合は、会社の仕組みに問題がある可能性があります。
- ■ 現地調査で劣化を把握できていなかった
- ■ 適切な下塗り材が指定されていなかった
- ■ 色や塗り分けの指示が曖昧だった
- ■ 工期が短すぎた
- ■ 完工検査が形式的だった
- ■ 失敗事例が社内で共有されていなかった
品質管理は、完成後に粗探しをすることではありません。
現地調査、見積り、材料発注、作業指示、各工程の確認を通じて、不具合を起こさない仕組みをつくることです。
手直しを減らすことは、利益を増やすだけでなく、お客様と職人の双方を守ることにつながります。
10. 外壁塗装会社の資金繰りが難しい理由
会社経営では、利益と現金は同じではありません。
外壁塗装会社は、材料や外注費を先に支払い、お客様から工事代金をあとで受け取ることがあります。
この時間差が大きくなるほど、資金繰りは難しくなります。
外壁塗装は天候の影響を受けます。
雨、強風、低温、高湿度が続けば施工できず、完工が遅れます。
完工時に残金を受け取る契約では、工事が一週間遅れると、入金も一週間遅れる可能性があります。
一方で、給与、外注費、材料代、家賃などの支払日は変わりません。
梅雨、台風、冬季などは、複数の現場が同時に遅れることもあります。
契約金や着工金として受け取ったお金を、以前の現場の支払いに使い始めると、資金繰りは危険な状態へ近づきます。
新しい契約を取り続けなければ過去の支払いができない状態になると、一件のキャンセルや天候不良だけで資金が回らなくなる可能性があります。
工事代金の受け取り方法には、契約時、着工時、中間時、完工時など、さまざまな形があります。
大切なのは、支払条件を契約書へ明記し、工事の進捗と資金の使い道を会社側が適切に管理することです。
借入金の元金返済は、損益計算書上の経費にはなりませんが、実際には銀行口座から現金が出ていきます。
そのため、決算上は利益が出ていても、借入金返済、設備投資、税金の支払いが重なると、手元資金が減少します。
車両、倉庫、事務所、人員を急に増やす場合は、売上の増加だけでなく、毎月の返済と固定費まで見通さなければなりません。
資金繰りを安定させるには、少なくとも数か月先までの入金予定と支払予定を一覧にし、利益ではなく現金の動きを確認する必要があります。
11. 下請け依存と多重構造による利益の減少
外壁塗装工事には、元請け会社、営業会社、管理会社、塗装会社、足場会社など、複数の事業者が関わる場合があります。
分業によって専門性を発揮できる利点がある一方、間に入る会社が増えるほど、それぞれの管理費や利益が必要になります。
お客様が支払う工事代金が高くても、実際に施工する会社へ十分な金額が届いているとは限りません。
下請け会社の受注金額が低すぎれば、職人の人工、材料、交通費、安全費を確保することが難しくなります。
その結果、工期短縮、経験の浅い職人への依存、材料使用量の不足などが起きるおそれがあります。
国土交通省も、労務費や材料費を含めた適切な価格設定と、サプライチェーン全体での価格転嫁を求めています。
売上の大部分を一社の元請け会社へ依存すると、仕事量が安定する利点があります。
一方で、単価の引き下げ、支払条件の変更、突然の発注停止があった際に、大きな影響を受けます。
また、採算が合わないと分かっていても、「断れば次の仕事が来なくなる」と考え、受注を続けてしまうことがあります。
健全な下請け関係には、適正な単価、明確な仕様、無理のない工程、対等な話し合いが必要です。
元請け、下請けを問わず、実際に必要な材料費と労務費を正直に積み上げることが、施工品質と業界全体を守ります。
12. 法令・安全・保証に必要な経費を軽視できない
外壁塗装会社の見積りには、塗料と職人の日当だけでは見えにくい経費があります。
それが、法令遵守、安全管理、保険、保証に関する費用です。
足場、メッシュシート、昇降設備、墜落制止用器具、ヘルメット、誘導員などは、職人と近隣の方を守るために必要です。
道路や歩道へ足場や車両がかかる場合は、道路使用や道路占用の手続きが必要になることもあります。
これらを「直接仕上がりに関係しないから」と省略することはできません。
事故が発生すれば、人命や身体への被害だけでなく、工事中断、損害賠償、行政対応、信用低下など、会社経営に重大な影響を与えます。
施工保証を出すということは、将来不具合が発生した際に、点検や補修へ伺う責任を負うことです。
そのため、保証期間が長ければ良いというわけではありません。
保証対象、免責事項、点検方法、施工記録が明確であり、会社が将来も対応できる経営体力を持っていることが重要です。
原価ぎりぎりの価格で受注しながら、長期保証だけを約束しても、将来の補修費用を確保できません。
(保証書は長さを競う紙ではなく、施工会社が責任を示す約束です)
適正価格には、安全と保証を継続するための費用も含まれています。
13. 口コミと情報公開の時代にごまかしは通用しない
現在は、お客様が塗装会社のホームページ、施工例、口コミ、SNS、地図情報などを簡単に確認できる時代です。
以前であれば表に出にくかった説明不足や対応の差も、広く共有される可能性があります。
見やすく整ったホームページは、お客様へ情報を伝えるために大切です。
しかし、きれいな写真、立派な店舗、派手な受賞歴だけでは、実際の施工品質までは判断できません。
見るべきなのは、施工前の劣化状況、補修工程、下塗り、使用材料、塗布回数、完成後の状態まで、具体的に説明されているかです。
どれほど誠実な会社でも、すべてのお客様から満点の評価をいただけるとは限りません。
大切なのは、問題が起きた際に逃げず、原因を調べ、必要な対応を行うことです。
口コミ対策だけに力を入れ、現場の問題を改善しなければ、同じ不満が繰り返されます。
お客様の声は、ときに耳の痛い内容もあります。
それでも、説明、連絡、近隣配慮、清掃、仕上がりなどを見直す貴重な材料になります。
情報を隠す会社よりも、できることとできないことを正直に伝え、失敗から改善できる会社の方が、長く信頼されます。
14. 外壁塗装会社が経営を立て直す具体策
外壁塗装会社の経営を立て直すには、単純に受注件数を増やすだけでは不十分です。
大切なのは、今ある仕事のなかから、利益、時間、品質を失わせている原因を見つけることです。
まず必要なのは、工事別の原価管理です。
| 確認項目 | 具体的な内容 | 改善につながること |
|---|---|---|
| 材料原価 | 塗料、シーリング材、養生材、副資材 | 見積り数量と実使用量の差を確認 |
| 労務原価 | 職人の人工数、残業、移動時間 | 工程と人員配置を改善 |
| 外注原価 | 足場、板金、防水、廃材処理 | 発注条件と単価を見直す |
| 集客原価 | 広告費、紹介料、営業歩合 | 契約一件当たりの獲得費を把握 |
| 品質原価 | 手直し、再訪問、追加材料 | 施工不良の原因を改善 |
予定より塗料が多く必要になった場合、職人の使い方だけを疑うのではなく、見積り数量、下地の吸い込み、塗装面積、施工方法が適切だったかを確認します。
周囲の会社がこの金額だから、以前からこの単価だから、という理由だけで価格を決めると、現在の原価に合わなくなることがあります。
塗装面積、使用量、人工数、足場、補修、安全費、管理費、保証対応費を積み上げ、そのうえで必要な利益を設定します。
価格を上げる際は、単に「材料が値上がりしたため」と伝えるだけでなく、何を守るために必要な価格なのかを説明することが大切です。
すべての依頼を受注することが、良い経営とは限りません。
極端に短い工期、必要工程を認めてもらえない仕様、原価を下回る価格、責任範囲が不明確な工事などは、契約前に条件を見直す必要があります。
工事を断ることは勇気が要ります。
しかし、無理な契約によって既存のお客様や職人へ迷惑をかけるよりも、できない理由を誠実に説明する方が責任ある判断です。
小規模な塗装会社では、経営者が現地調査、見積り、契約、材料発注、現場管理、請求、クレーム対応まで行っていることがあります。
経営者が倒れたり、判断が遅れたりすると、会社全体が止まってしまいます。
作業指示書、見積り基準、発注表、工程表、検査表を整備し、仕事を分担できる状態をつくることが必要です。
高品質な施工は時間と費用がかかります。
しかし、適切な下地処理、養生、乾燥時間、完工検査を行えば、手直しとクレームを減らせます。
つまり品質管理は、短期的には費用に見えても、長期的には利益と信用を守る投資です。
利益を残すために品質を削るのではなく、品質を安定させることで無駄な損失を減らす。
これが、塗装会社らしい健全な経営だと考えます。
15. お客様が健全な外壁塗装会社を見分ける方法
ここまで塗装会社側の経営について説明してきましたが、お客様にとっても無関係な話ではありません。
経営に余裕がない会社は、工期を急いだり、必要な材料を減らしたり、保証対応が難しくなったりする可能性があります。
ただし、会社の規模、店舗の大きさ、広告量だけで経営状態を判断することはできません。
- ■ 塗装面積の根拠が示されているか
- ■ 下地補修の内容が具体的か
- ■ 下塗り材と上塗り材の商品名が分かるか
- ■ 塗布回数と使用量が説明されているか
- ■ シーリングの施工方法が明確か
- ■ 塗装しない部分が記載されているか
- ■ 追加費用が発生する条件が明確か
細かく書いてある見積りが必ず正しいとは限りませんが、内容が曖昧な一式見積りでは比較が難しくなります。
「今日契約すれば大幅値引き」「足場が余っているので今だけ安い」など、考える時間を与えない営業には注意が必要です。
外壁塗装は、色、塗料、補修、予算を比較しながら決める工事です。
質問に丁寧に答え、持ち帰って検討する時間を認めてくれる会社の方が、落ち着いて判断できます。
契約を担当する人だけでなく、誰が現場を管理し、誰が施工するのかを確認しましょう。
自社職人、協力会社のどちらであっても、施工基準と責任者が明確であれば問題ありません。
反対に、「職人は決まっていない」「現場へ伝えておきます」という説明だけでは、情報共有の方法が見えません。
地域で長く仕事を続けるには、施工後の不具合やお客様からの相談に向き合う必要があります。
施工実績の件数だけでなく、過去の施工例、地域での活動、会社所在地、連絡先、建設業許可、保険加入なども確認すると安心です。
経営が厳しい会社だから、必ず悪い施工をするわけではありません。
また、利益を出している会社だから、必ず良い会社とも限りません。
大切なのは、必要な費用を正しく見積り、職人を大切にし、お客様との約束を守りながら、長く責任を負える会社かどうかです。
16. まとめ|良い外壁塗装を続けるには健全な経営が必要です

外壁塗装会社の経営が厳しくなる理由は、仕事がないことだけではありません。
塗料や副資材の値上がり、人件費、社会保険料、広告費、安全管理費などが増える一方で、工事価格へ十分に反映できなければ、利益は少しずつ削られます。
さらに、受注件数を優先して施工能力を超える仕事を抱えると、工程の遅れ、職人の疲労、情報共有不足、手直し工事が増えます。
売上が増えても、材料費や外注費の支払いが先行すれば、資金繰りが苦しくなることもあります。
- ■ 売上だけでなく、工事一件ごとの利益を見る
- ■ 原価上昇を適正に見積価格へ反映する
- ■ 施工能力を超える受注をしない
- ■ 職人を育て、長く働ける環境をつくる
- ■ 手直しの原因を仕組みから改善する
- ■ 数か月先まで資金繰りを確認する
- ■ 安全、保証、法令遵守の費用を確保する
塗装会社が適正な利益を確保することは、お客様から必要以上に高い費用をいただくことではありません。
職人が安心して働き、必要な材料を使い、丁寧に下地を整え、施工後の相談にも責任を持って対応するために必要なことです。
私たち小林塗装は、価格の安さだけを競うのではなく、建物の状態に合った施工内容を分かりやすく説明し、長持ちする工事を適正価格で提供することを大切にしています。
外壁塗装の見積りを見て、「どうしてこの工程が必要なのだろう」「この金額は適正なのだろう」と感じたときは、遠慮なく施工会社へ質問してください。
質問へ丁寧に答えられることも、良い工事を続ける会社に必要な力です。
良い塗装工事は、職人の技術だけでなく、誠実で無理のない会社経営によって支えられています。
17. 外壁塗装会社の経営に関するQ&A

はい、あります。
塗装技術と会社経営は、それぞれ異なる能力です。
丁寧できれいな施工ができても、原価計算、見積り、集客、人材育成、資金繰りが不十分であれば、利益や現金が残らないことがあります。
反対に、営業や経営が得意でも、現場品質が低ければ長期的な信用は築けません。
技術と経営の両方を整えることが、長く続く塗装会社には必要です。
売上が増えると、塗料代、足場代、外注費、給与などの先払い資金も増えるためです。
採算の低い工事を大量に受注した場合、売上高は大きくても利益が少なく、手元資金が不足することがあります。
売上の大きさだけでなく、粗利益、入金時期、支払時期、現預金残高を見る必要があります。
安いという理由だけで、危険とは判断できません。
自社施工、低い固定費、効率的な工程によって、お値打ち価格を実現している会社もあります。
ただし、必要な塗布量、下地処理、職人の人件費、安全費、保証費用まで含めても成立する価格かを確認することが大切です。
金額の安さより、価格の根拠を聞いてみましょう。
自社施工には、中間マージンを抑えやすく、営業担当者と職人の距離が近いという利点があります。
一方で、職人の給与、社会保険料、車両、工具、教育費などの固定費が必要です。
自社施工という言葉だけでなく、職人の教育、施工基準、現場管理、完工検査の方法まで確認してください。
協力会社施工であっても、長年連携し、品質基準が統一されている会社なら、良い工事は可能です。
広告を出していること自体は、問題ではありません。
広告は、自社の存在やサービスを知っていただくために必要な手段の一つです。
確認したいのは、広告費が過大になり、施工へ必要な予算を圧迫していないかという点です。
広告の派手さではなく、現地調査、見積り、施工記録、担当者の説明を見て判断しましょう。
契約時や着工時に一部を支払う契約はあります。
ただし、着工前に全額または大部分の支払いを急かされる場合は、慎重に確認してください。
支払時期、工事の進捗、解約条件、返金条件が契約書へ明記されているかが重要です。
不安がある場合は、その場で支払わず、家族や第三者へ相談しましょう。
職人不足だけで必ず品質が下がるわけではありませんが、無理な受注と工程が重なると影響する可能性があります。
経験不足の職人へ任せきりにする、現場監督が巡回できない、乾燥時間を短縮するといった状態は避けなければなりません。
施工人数だけでなく、管理者、作業指示、検査体制が整っているかが重要です。
保証期間の長さだけで判断することはおすすめできません。
保証対象、免責事項、点検方法、補修範囲、施工記録を確認してください。
また、塗料メーカーが示す期待耐用年数と、施工会社が出す工事保証は別のものです。
現実的な内容を分かりやすく説明してくれる会社の方が信頼できます。
元請けか下請けかだけでは、施工品質を判断できません。
重要なのは、実際に施工する職人、現場管理者、仕様を決める人、保証責任を負う人が明確であることです。
営業会社と施工会社が異なる場合は、要望や色、補修方法がどのように共有されるかを確認しましょう。
責任の所在が曖昧な契約は避けることが大切です。
会社の財務内容を外部から完全に確認することは難しいため、日頃の仕事ぶりから総合的に判断します。
- ■ 現地調査が丁寧である
- ■ 見積りの根拠を説明できる
- ■ 過度な値引きや即決を迫らない
- ■ 工期に無理がない
- ■ 施工中の写真や記録を残す
- ■ 保証内容が具体的である
- ■ 職人や近隣への配慮がある
- ■ 地域で継続して施工している
一つの条件だけで決めず、説明、価格、施工体制、実績、担当者の姿勢を比較してください。
質問に対して都合の良い話だけでなく、デメリットや施工できないことも正直に伝える会社は、比較的信頼しやすいと考えます。
18. 参考にした公的資料・業界資料
本記事の業界動向に関する記述は、次の資料を参考にし、小林塗装が30年以上の塗装現場で経験してきた内容を加えて考察しています。
- ■ 国土交通省「令和7年版国土交通白書」
- ■ 中小企業庁「2025年版 中小企業白書」
- ■ 国土交通省「改正建設業法について」
- ■ 帝国データバンク「建設業の倒産動向(2025年)」
- ■ 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
統計数値は公表時点の内容であり、今後の調査や公表資料によって変更される場合があります。
コラム筆者
小林塗装 店主 小林ゆず
塗装業に携わって30年以上、施工実績2,000件以上。
外壁塗装、屋根塗装、防水工事、シーリング工事、下地補修、色彩提案など、住宅塗装の現場に幅広く携わっています。
塗装工事は、塗料の名前や価格だけで品質が決まるものではありません。
建物の状態を正しく診断し、下地に合った材料を選び、必要な塗布量と乾燥時間を守り、職人同士が連携することで、初めて長持ちする仕上がりになります。
小林塗装では、費用の安さだけを強調するのではなく、適正価格、高品質な施工、分かりやすい説明を大切にしています。
良いことだけでなく、施工上の注意点やデメリットも正直にお伝えし、お客様が納得して工事を選べるよう心掛けています。
名古屋市を中心とした外壁塗装・屋根塗装の調査、診断、お見積りは無料です。
住まいの状態や色選びについて気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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