

外壁、屋根塗装の塗料からフッ素塗料が無くなる?
最近、新聞やニュースで河川や地下水から暫定目標値を超える高濃度のPFAS(ピーファス:有機フッ素化合物 )が各地で相次いで検出されているという報道を見聞きしたことはないでしょうか。
このPFASは、発がん性の不安があるので、これまで知らずにその水を使用していた地元住民の方達は強い不安を訴えていました。
さらにその水は一部で飲用水にも使用されていたため、一般の人が知らない間に高濃度のPFASを摂取している可能性が懸念され、早急に対策が求められています。
こういったことで問題となっているPFASとは、約12,000種類ある有機フッ素化合物の総称で、住宅用フッ素樹脂塗料の原材料としても使用されていることでもよく知られています。
今回は、そんなPFASに関する「フッ素樹脂塗料は環境汚染や健康被害の懸念があるのか?」、「規制が進んで今後フッ素樹脂塗料は使用できなくなってしまうのか?」などフッ素塗料に関する最新情報を「名古屋の塗装店」小林塗装が外壁塗装など塗装工事を検討しているお客様に分かりやすくお伝えします。
最近の報道されているPFASに関する環境問題やフッ素塗料について知りたいお客様はぜひこのコラムを御覧ください。
1. PFAS=有機フッ素化合物とは?
PFASとは、先にもお伝えしたように有機フッ素化合物の総称で、現在では約12,000種類の有機フッ素化合物があるとされています。
有機フッ素化合物は、水や油を弾き、薬品に強い、電気を通さない、さらに熱にも強いとなどいった、とても優れた性質を持ち「テフロン加工」と呼ばれているフライパンの表面特殊加工や、泡消火剤、外壁塗料、自動車のコーティングなど様々な用途で使われてきました。
外壁、屋根塗装以外でのPFASの主な使用用途 | |
---|---|
車のコーティング剤、ワックス | 防汚性、耐熱性、撥水性、滑雪性 |
スキーやスノーボードのワックス | 滑雪性 |
フライパン、鍋、炊飯器のフッ素加工 | 耐熱性、防汚性、撥水性 |
服や靴の撥水加工 | 防汚性、撥水性 |
半導体の表面処理 | 耐薬品性、耐薬品性、電気絶縁性、防汚性 |
防汚、防水性の布地 | 防汚性、撥水性 |
ピザハンバーガー厚紙箱、包装用紙 | 防汚性、撥水性 |
泡消火剤 | 耐熱性、難燃性 |
金属メッキ液 | 耐候性、防汚性 |
工業塗料の添加剤 | 耐候性、防汚性 |
PFAS(有機フッ素化合物)は、自然界では分解されにくいなど、その科学的安定性から「永遠の化学物質」とも呼ばれています。
その優れた性質から長い間、多くの人々に恩恵を与えてきたPFASですが、その一方で残留性が非常に高く、水、土壌、自然や人体の中で分解されにくい、体外に排出されにくく、体内に蓄積されやすいうえ、免疫機能を低下させる作用や発がん性などといった悪影響も多く指摘されています。
もし、子供の頃「永遠の化学物質」に多く暴露された人は、体内に蓄積された有害物質と一生に亘って共に過ごすことになるのです。
約12,000種類のPFASの中でも、特にPFOS(ピーフォス:ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ピーフォア:ペルフルオロオクタン酸)は健康へのリスクが懸念されており、環境省は2020年、河川や地下水など環境中に漏れ出したPFOSとPFOAの濃度について、合わせて1リットルあたり50ナノグラム(ナノは10億分の1)という「暫定目標値」を設けています。
コラムの冒頭でお伝えした内容は、いくつかの自治体で環境調査をはじめた結果、PFASの中でも有害性の高いPFOSとPFOAが、各地でその暫定目標値を上回る値が検出されたといった内容のものです。
そんなPFASですが、実は塗料の原材料としても使用されています。
今や防食塗料分野で厳しい腐食環境に置かれる長大構造物の上塗りはほとんどフッ素樹脂塗料が使われるようになりました。
日本国内におけるフッ素樹脂塗料の代表的な施工例を挙げると、1993年に使用が開始された東京都の港区芝浦と台場を結ぶ「レインボーブリッジ」があります。
このレインボーブリッジは30年を以上を経過した現在に至るまで、まだ1回も全面塗装が実施されていません。
東京オリンピックの前に部分的な補修塗装が行われたのみの状態で現在に至っています。
こういった防食塗装分野では、フッ素塗料は抜群の耐候性を誇るエース級塗料と言えます。
ドイツやフィンランドに代表される環境先進国が集う欧州圏では、PFOSとPFOA のみならず約12,000種類に上るPFAS全体に対する規制が始まろうとしています。
規制が予定通り施行された場合(最短で2025年中施行予定)、日常品から塗料用フッ素樹脂を含む各種産業に至る幅広い分野で、猶予期間を経て、有機フッ素化合物の製造も使用も制限されることになります。
規制はEU加盟国全体に適用されるため、EUに進出している日本の建材、化学、金属メーカーも順次対応する必要があり、日本の社会全体にも大きな影響を与えることになりかねません。
そのため、フッ素樹脂塗料を試用している塗装業者も、欧州の制限案の行方とそれを受けた国の動静を注視する必要があります。
2. 外壁塗装など塗料に使われているフッ素(PFAS)について
外壁塗装のフッ素樹脂塗料に使用されるフッ素樹脂には、国産から海外産までさまざまな製品があります。
例えばAGC社のルミフロン®は、交互共重合体を主鎖とし、その強固な結合エネルギーが紫外線による分解を防ぎ、塗装物を長期間保護することができる理想的な耐候性能を示すものです。
そのAGC社では、PFOSについては製造や販売実績がなく、またPFOAの製造、販売についても条約や国内の法令による規制に先立ち、2015年に終了しています。
ルミフロン®を含むAGC社のフッ素樹脂は、現時点で科学的に危険性が指摘されていないため、それを配合したフッ素樹脂塗料についても今まで通り安心して使用することができます。
炭素-フッ素結合は結合エネルギーが高く極めて安定であり、長期間の紫外線や風雨に暴露されても容易に分解しません。
フッ素樹脂はその実力が認められて、重防食塗料のISO規格(国際標準化機構が定めた品質規格)の塗装使用でも指定上塗り材の一つになっています。
またフッ素塗料の一部で、光沢度保持率を高める(チョーキング発生を遅く)ことを目的として高耐久性ふっ素の開発が行われ、配合樹脂やチタン顔料に改良を加えています。
しかし、海外製品を含む多くのフッ素樹脂が塗料製品となって市場に流通していることから、今後の調査や規制の行方によっては見直しを迫られる製品も出てくる可能性があります。
3. 外壁塗装 フッ素塗料は今後どうなるの?
PFASの代替手段の確保には、どの産業分野でも相当の時間と莫大な研究開発の費用が必要です。
ですから、塗料業界においても、
橋りょうや鉄塔、トンネルなど公共工事が主である構造物や重防食分野で、フッ素塗料に替わる新しい代替品をすぐに規格化して採用することは現実的ではありません。高級塗料の代名詞、フッ素塗料の特徴
上記のような危険性が懸念され、「特定PFAS」は、2,001年ストックホルムで採択された「POPs条約」および日本国内の「化審法※2」により規制対象となりました。
そのため、「特定PFAS」3種類全てが、日本国内での製造や製品への使用は禁止されています。
※1:POPs条約とは、早急な対応が必要と思われる環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念される持続性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)の製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理などを規定している条約です。
日本は2002年に受諾しています。
※2:化審法とは、化学物質審査規制法のことで、1,973年に公布された法律で正式には「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」と呼ばれる法律です。
その内容は、人の健康を損なう恐れ、または動植物の生息、生育に支障を及ぼす恐れがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的とする法律です。
4. 住宅外壁用フッ素樹脂塗料を超える高耐候塗料とは?
フッ素単体のポテンシャルに並ぶ新しい代替素材は現在存在しておらず、今後も見つからない可能性もあります。
しかし、フッ素樹脂を超える性能を作り出せる可能性がある原料はあります。
それは、近年各塗料メーカーが住宅用塗料にラインナップを拡充している「無機有機ハイブリッド塗料」に使われている、シロキサン=SiO2(二酸化ケイ素)と呼ばれる無機由来の成分です。
フッ素樹脂は高価な原料なので、塗料中のフッ素含有量がほぼそのまま塗料の価格に比例します。
そのため、価格の安いフッ素樹脂は安いなり、高価なフッ素樹脂は高いなりと言えます。
一方、無機有機ハイブリッドは、フッ素樹脂とは塗料の架橋設計の概念が異なるため、フッ素樹脂塗料よりも比較的安価製造する事が可能で、ライフサイクルコストの低減を実現する高い耐候性を作り出すことができます。
5. フッ素塗料など住宅用外壁高耐候塗料の将来
前述のとおり住宅の外壁や屋根など塗り替え用塗料に限って言えば、フッ素樹脂「原料」自体の代替えは効かないのですが、フッ素樹脂塗料がなければ産業構造や住宅塗装市場が破綻するというものではありません。
今回の欧州規制案の動向に関わらず、今後国内外の検査や健康被害の状況によっては、遅かれ早かれ何らかの制限は進むと予想されますし、PFAS報道の過熱にともない市場でもフッ素全体が一緒くたに見られ、社会的なイメージが下がってしまうことも大いに考えられます。
そしてメーカー側としても、そのような将来的な需給バランスに不安の残る製品の開発にはリスクが伴います。
いま、外壁塗装業界で最も懸念されるシナリオは、欧州規制案の発行後、一定の猶予期間を経てPFAS全体の製造と使用ができなくなってしまうことですが、塗料に使用するフッ素樹脂においては猶予期間の延長品目にも指定されておらず、今後も指定されるかは不透明な状況です。
そのため、PFASが必要不可欠な分野であれば、日本政府から政策原案を関係団体に送付するとともに、ホームページなどにも掲示、そこから意見を募集して政策案に反映させるなどして特例(猶予期間)を確保しつつ、住宅用塗料であればPFASフリーな社会に向けて適正管理、使用削減、そして無機塗料のような代替塗料の拡充を早急に進めていく必要があると考えています。
塗料は、以前から有機溶剤を使用することがあるので、環境に対して悪者にされがちです。
こうした背景に苦慮している塗料メーカーは多く、だからこそ環境配慮に対して一番敏感な業界です。
会社として積極的に環境へ配慮していく姿勢を多くの塗料メーカーが持っていますので、より安全で環境にやさしい塗料が開発されています。
最近では、エスケー化研の「エスケープレミアム無機」、ロックペイントの「ロックハイパーリアクターコート無機」など環境や人体に配慮した住宅用高耐候塗料などが徐々にラインナップされています。
6. 屋根や外壁塗装の塗料からフッ素塗料が無くなる? まとめ
その中でも有害なものがごく一部あります。
しかし、有害だと判明しているものは国内では厳しい規制の対象となっています。
一括りにして悪者扱いするのは早計と言えます。
ですから、住宅の塗り替えで外壁塗装業者からフッ素樹脂塗料を提案された際には、PFAS規制案を踏まえて、どういったフッ素樹脂が使われているのか、塗装業者の提案を聞いてみると不安も取り除けるのではないでしょうか。
塗り替えで使われるフッ素樹脂塗料が、作業する職人やお客様にとって、すぐ健康被害に繋がることは考えにくいですが、環境、健康、安全に対する意識や関心はますます高まってきています。
効率性・経済性が優先され、使用規制が遅れた結果、今では建設業界の負の遺産と呼ばれているアスベストのように、フッ素も将来的にそうならないとは言い切れません。
なお、当店が取り扱っているのフッ素塗料には、「特定PFAS」が含まれておらず、使用しているフッ素樹脂は人体への有害性が低いと考えられるので安心してください。
また当店では、環境に優しくフッ素以上のポテンシャルを持つ「無機有機ハイブリッド塗料」も多く取り扱っています。
外壁塗装 施工に関するよくある質問・相談まとめ
環境にやさしいフッ素塗料や無機塗料を使用した外壁塗装なら小林塗装にお任せください。
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いつも高品質で安心、お値打ち価格の塗り替えを行っています。
塗装工事の調査と見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。

コラム筆者
小林塗装 店主 小林ゆず
小林塗装の店主小林ゆずは、名古屋「塗装工事の専門店」小林塗装ホームページのコラムを作成しています。 塗装工事のエキスパートとして、外壁、屋根、室内など塗り替え工事を検討している一般のお客様にとって分かりやすく、役立つ情報発信をいつも心掛けています。
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